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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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特別興行 がんばれ田原くん! 『是奈と愉快な中間たち 2』 前編-9

隊員達は奥さんをストレッチャに乗せると、慌てず急いで救急車に乗せる。
 女医さんは、
「もう大丈夫ですからねぇ」
 と優しく声を掛けながら、奥さんの腕を取っ手、脈を調べたりしていた。
その横で旦那さんと清美が心配そうに奥さんの顔を覗き込みながら、いっしょに救急車に乗り込むと、救急車は静かに走り出し、丘の上公園駐車場を大きく旋回しはじめた。
隊長は見送っている嘉幸と都子に向って、口をへの字に曲げながら、凛々しくも敬礼をする。
 嘉幸もまた、そんな隊長に向ってビシっと敬礼をし、そして思っていた。
(やつこそ男の中の男だ! 藤見晴市に栄光あれ!!)と。
都子はその横で嘉幸をまねて、腕を大きく突き出し、”ハイルヒットラー”なポーズを取っていた。って言うか都子! それは違うだろう!
そして救急車は足早に駐車場を離れ、軽快にピーポーピーポーと嘉幸達の前から去って行ったのだった。
嘉幸はようやく肩の荷が下りたと言いたげな表情でもって、深呼吸を一回すると、
「たすかったぁ〜」
 安堵の溜息をついたりもする。
 その横で都子もしゃがみ込み、歓喜の思いに打ち震えたのか、嬉し涙に奇麗な顔を濡らしていた。
「よかったな385(みやこ)」
 嘉幸も都子の肩を軽く叩き、彼女を励ます。そして、良い事をした後の、清清しい気持を広がった青空と重ね合わせて、嘉幸は心から満足気に微笑むのだった。
 がしかし。
「あはん、うへん、うぇ〜えん!」
 都子が似合わなくも、可愛らしく泣きながら。
「痛いよ〜 田原く〜ん ……お腹が痛いよ〜、え〜んっ!」
そんな声を聞くや否や、再び嘉幸の全身に100万ボルトの電流がひた走る。
「しまった! 忘れてたあーー!!」
 嘉幸は頭を抱えて仰け反ると。
「お前もさっきの救急車に乗せりゃー良かった!!」
 後のまつりだったりもする。
「しかもなんで清美ちゃんはいっしょに乗って行っちまったんだーー!」
行ってしまった者は仕方がない。などと言ってもはじまらないが、って言うか早く気づけよ!
嘉幸はしかたなく、また都子を背負うと、救急車の後を追って走り出すのであった。


 後編へつづく……


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