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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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特別興行 がんばれ田原くん! 『是奈と愉快な中間たち 2』 前編-6

 これは大変だ!
 駆け下りてきた嘉幸達であったが、困っているご夫婦に気が付くと、急停車して。
「どうしたんですか? 大丈夫ですか!」
 嘉幸は夫婦に声を掛けていた。
 見れば奥さんの方はだいぶ苦しそうであり、旦那は座り込んで動けない奥さんを支えながら。
「すみません! 妻が! 生まれそうなんです! 助けてください!!」
 嘉幸を見上げて、そう言った。
 いまいち要点を得てない説明をする旦那ではあったが、嘉幸には旦那が何を言いたいのか直に解ったらしい。
「解りました! すぐ救急車を呼びますから待っててください!!」
 そう言うと嘉幸は。
「清美ちゃんはここに残って、この人達のことを見ててくれるかな」
 言い残し、都子を背負ったまま再び遊歩道を走り出したのだった。
 清美は嘉幸に言われると、黙ってうなずき、旦那さんを手伝って、奥さんを硬いアスファルトの上から、脇の土手の軟らかそうな草の上へと移動させていた。


 間もなく嘉幸は遊歩道の坂道を降りきると、その勢いも衰えないまま駐車場の先、公園入り口近くに幾つか並んでいた電話ボックスの中へと走り込んでいた。
 そうして、おんぶされたままで都子が公衆電話の受話器を取ると、嘉幸は息も絶え絶えに、ゼーゼーしながら、それでも緊急用の赤いボタンを押して、119番をプッシュする。
”プルル〜・・・ガチッ! はいっこちら緊急通報センター、火事ですか? 事故ですか?”
 直に緊急受付の担当官が電話にでるが。
「はー、はー、ぜー、ぜー……」
”どうしました? 大丈夫ですか?・・・”
「はー、はー、あのー、ぜー、ぜー」
 嘉幸、息切れしてて声が出せない。
 しかなく嘉幸は(お前が話せよ!)と、背中越しに都子を突っついて、サインを送る。だいいち受話器を持っているのは385(都子)、お前だろう! と、それ気な顔もする。
 それを受けて。
「えっ! あたしがじゃべるの!!」
 と、都子もけっこう緊張しているらしい、直ぐには声が出せないでいた。
”どうしました、聞こえますか、もしもし”
 担当官も懸命である。
 慌てて都子も喋りだした。
「あのー、えっとー、生まれるんです! 旦那さんが」
 都子のじゃべりを聞いて、嘉幸は(違う! そうじゃないだろう!!)と、激しく首を横に振るも、まだ声が出ない。
”旦那さんがどうなされたんですか”
「あーんっ! じゃなくてー! 赤ちゃんに奥さんが生まれそうなんです!!」
 嘉幸、さらに激しく首を振っていた。
”急に出産しそうになったわけですね ”
 だがそれでも、担当官はどうやら百戦錬磨のツワモノだったらしい。豊富な経験から、都子の片言説明で、大体の状況を理解してくれていた。
”場所は何処ですか? 今どこにいますか?”
「えっとー、バーベキューやった所の下」
(バカかお前は! そんなんで解るわけねーだろうが!)
 嘉幸、心で叫ぶも。
”それは公園ですか、河原ですか”
 だが担当官、かなりいい感している。
「あのね、丘の上の公園」
”解りました、直に担当の救急隊員が向かいますから、その場に居てください”
 おおー! 凄いぞ緊急通報受付担当官! 都子の片言説明でここの場所が特定出来るとは、侮(あなど)りがたし。嘉幸は感心していた。
 都子は受話器を下ろすと。
「田原く〜ん良かったね、すぐに『れいきゅう車』が来るそうよ」
 そういってにこやかに笑いもする。
 空かさず嘉幸は。
「きゅーきゅー車だ!! ……あ、声でた」
 叫んでいた。


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