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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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特別興行 がんばれ田原くん! 『是奈と愉快な中間たち 2』 前編-4

 だがそんな時である。
 いったいつの間に起きたのやら、都子がうつろな眼をして嘉幸に擦り寄って来たではないか。そして嘉幸の耳元に、自身の顔を近づけて来たりもする。
 嘉幸は。
(なんだこいつ、まさか告白でもする気かぁ!?)
 などと、冗談混じりにも内心ドキドキと、心臓の鼓動を弾ませはするが。
「田原く〜ん ……お腹が ……痛い」
 そんな台詞を聞いた途端、嘉幸は寝そべっていたビーチチェアの上に立ち上り。
「ぬわぁにーーーー!」
 思わず叫んでいた。
 見れば都子、お腹の辺りを押えて、眉間にしわが出来るくらい眼を細め、歯をくいしばってなにやら必死にがまんしているような顔をしている。
 嘉幸は、一瞬自分の顔に手を当てて(なんてこったい)と言いたげな素振りをしたが、直ぐに。
「だからあんな猛毒きのこなんか食うなって言ったんだ!!」
 と都子を怒鳴りつけていた。
 都子は怒られたショックと、痛みが我慢の限界を超えたのか、座り込んで、左手でお腹を押え、右手で眼の辺りを擦りながら、泣き出していた。
「ふへぇええ〜ん! 痛いよ〜お腹痛いよ〜〜! あはぁ〜ぁん!!」
「バカかーお前は! 泣くなー!!」
 怒鳴られようが馬鹿と言われようが腹痛が収まるわけでもなく、都子はますます轟泣する。もうこうなるとサイボーグもへったくれも有ったもんじゃないだろう。か弱き女子高校生がそこに居るだけだったりもして。そんな彼女の事を、嘉幸もなにげに可愛いなんて思ったりもしていた。
「あいや、いかんいかん!」
 それでも嘉幸は、首を振って変な妄想を振り払うと。
「とにかくなんとかしなくては。そうだ清美ちゃん! 薬とか持って来てなかったかな?!」
 そう言いながら慌てて自身も、自身が背負って来たディバックの中身をまさぐっていた。
 言われた清美も嘉幸と同じように自分のリュックの中を覗いては見るものの。
「あっ! 有ったっ!!」
「えっ! 本当かい清美ちゃん!!」
「見て見てぇー嘉幸お兄ちゃん! これ今流行の『二人はプリクラ着せ替えカード』なんだよ。一枚なくしちゃって、どうしても見つからなかったんだけど、な〜んだ、こんな所に入れ忘れてたんだぁ」
 清美はリュックの底に隠れていた、人気アニメの絵柄が入ったトレーディングカードの様な物を取り出すと、それを嬉しそうに嘉幸に掲げて見せたりもする。そうして、さらには持って来ていた携帯ゲーム機を取り出すと。
「いい、お兄ちゃん見てて!」
 と、カードをゲーム機のスロットに通したりもする。するとゲームの画面に映っていた女の子のキャラクターが衣装を変えたではないか。
 そんなゲーム画面を真面目な顔をして覗き込んでいた嘉幸は。
「へへーーぇ! 最近はこういうゲームが流行っているのか。ゲームの世界も随分と代わって来たんだな」
 と、アゴに手を当てて、ひとしきりに感心したりもする。
 って言うか! そんなことして遊んでいる場合ではないだろう。
 嘉幸と清美が貴重な時間を浪費をしている間にも、都子の腹痛は益々激しさを増した様子である。
「ビエ〜〜〜ン!!!」
 と泣きじゃくる都子に、嘉幸も成すすべがなかった。
 が。
「そうだ!」
 嘉幸、突然何か閃いたらしい。
「こんな時こそ携帯だよな!」
 そう言って着ていたジャンバーのポケットをまさぐると、携帯電話を取り出し。
「待ってろ、直に救急車呼んでやるから!」
 と、すぐさま緊急連絡をするべく、119と携帯電話のキーを叩いたのだった。
 するとそれを見た都子は。
「えっ! 救急車!!」
 突然顔を青くさせもする。さらには。
「いや〜〜あぁ、救急車はいやー! 注射はいやー! 痛いのはいやーー!!」
 と手足をバタバタさせて、だだをこねたりもする。


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