投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 140 飃(つむじ)の啼く…… 142 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

飃の啼く…第13章-2

+++++++++++++





「ずいぶん伸びたな。」

ソファに座る飃の足に頭を預ける私の髪を手で梳きながら、言った。

「髪は伸ばしたほうが良いって、言ったのは飃でしょ?そのほうが霊力がつくからって。」

「見た目も良い。」

私は寝転がったまま飃を見た。

「なーに、短かった頃は可愛くなかったって?」

本気で怒っているわけではない。それをしっているから、飃は笑った。気持ちいい春の午後。窓からさす陽光が部屋の中を暖めている。私は…思わずあくびを…ふぁ〜ぁ…

「なんだ、まだ寝るのか?さくら。」

「だって今、月のものの最中なんだもん。この時期は…ねむ…」

また、大きなあくびが言葉を邪魔した。生理の時はいくらでも寝られる。厄介なものだ。なんでもないことで苛々するし、加えて下半身の倦怠感…まあ、もう一つの理由で、一番苛々しているのは飃だ。何しろ、一週間も「お預け」なのだから。飃は、私の額に少しだけ長いキスをした。



開け放った窓から、春の埃っぽい香りが漂ってくる。でも、一緒に入り込む風はまだ少し冷たい。

「よっこら…」

窓を閉めに起き上がると、

「…しょ。」

目の前に蜘蛛がいた。

蜘蛛。

手のひらほどの蜘蛛。



「ぎゃああぁああ〜っ!!」



きっとマンション中に聞こえた私の悲鳴に動じることなく、飃はさりげなく見やった。

天井からぶら下がっている真っ黒な蜘蛛。大きさでは並ぶタランチュラとは似ても似つかない、長くて細い八本の足。妖艶とさえいえる。もし虫が好きなら、だが。

「女郎蜘蛛、か。」



『彼女』は、するすると糸を伸ばし、床まで届くと、その場で人間へと変化した。なるほど妖艶と言うのは間違っていなかった。黒と紫の奇麗な着物に身を包んだ、美しい女性だ。見事なまつ毛に縁取られた両目、その下に左右3つずつ、目の模様が刻まれている。

「このような無礼を働いたこと、お許しください…本日は…」

彼女は目を伏せた。長いまつげが、影を落とす。そして、意を決したようにきっと顔を上げた。

「私の主人を、滅ぼしていただきたく、お願いしに参った次第です!」



私が異論を唱える前に、彼女は着物の裾をめくった。あわわ…と、目をそらす間もなく、そこにあるものに気づく。無数の紫…そして青と黒。


飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 140 飃(つむじ)の啼く…… 142 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前