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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈貴未篇〉前編-12

「母さんが好きだった本、もちろんオレも好きだった本だ。きっとリュナも気に入ると思う。」

やさしい表情。カルサの小さい頃の大切な思い出がつまった絵本がリュナの手の中にある。

「ありがとう。」

嬉しくて、その言葉しか出てこなかった。カルサはほほ笑み、リュナの頭をぽんぽんと叩くと立ち上がった。

「じゃあ会議に行ってくる。後で感想を聞きにくるから。」

「ええ、待ってる。」

「レプリカ、引き続き頼む。」

カルサはレプリカが返事したのを確認するとすぐに部屋を後にした。残された二人はカルサが去った後の扉を見ていた。

「カルサ様は優しい人ですね。」

まだカルサのいた空気の余韻が残る中、レプリカが口を開いた。

「私の正体を知る人しかいない時、私の事をレプリカと呼んでくれます。」

そう言ってリュナに笑いかけた。同じようにリュナも微笑む。手の中にある本をもう一度撫でた。そこにカルサのぬくもりがある気がしてリュナは思わずはにかんでしまった。

今日はいい天気だ、しかし心なしかリュナの体調はいつもより良い。会議室に足を運ぶカルサの足はいつもより軽快だった。

「カルサ!」

彼の名を呼び目の前に立っていたのは貴未と日向だった。

「貴未!日向か!」

仲間の無事の帰還に喜びの声を上げたが、貴未達の表情は違っていた。真っすぐ向けられた貴未の目は怒りにも似ている。

貴未は知ってしまった、カルサはそう悟った。思わず苦笑いをしてしまう。

止めていた足を再び動かし少しずつ貴未達の方へ近づいていった。

「よく無事に戻ったな、お疲れさん。」

「カルサ、話がある。」

貴未は近づいてくるカルサに向けて放った。カルサは頷き答えた。

「先にオレの部屋に行っててくれ。会議の後すぐに向かう。」

「分かった。」

足を止める事無く会話が終わり、お互いに目的地へと進みだした。貴未についていく日向はすれ違い去っていくカルサの後ろ姿を見ていた。

前を歩く貴未の表情は不機嫌そうにも見える。しばらく歩き目的のカルサの部屋に着いた。貴未は念の為にノックをしてから扉を開けた。

返事はない、見渡すかぎり人の姿も気配もなかった。二人は中の方に進み立ち止まった。


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