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ヒトナツ
【コメディ 恋愛小説】

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ヒトナツA-2

夕食を終え、自室に籠る。
ベッドに飛び込んで携帯電話を開いた。
「お」
桜さんからメールがきていた。

『健吾くん、今なにしてますか?(*^_^*)』

『遅くなってごめん、今まで夕食でした(^O^)焼き魚うまかった!』

返信すると同時に、自然とニヤけてしまう。
彼女がいるってこんなに楽しいことなのか。
頑張ってみてよかったぜ!
なんて、天井を見ながらガッツポーズ。

明日から夏休みだし、今度デートに誘ってみるかな!
場所はどこにしようかな!

しかし、俺の中のテンションがメーターを一気に振り切ろうとしたとき、思わぬ侵入者が。
「健吾…入っていい、かな?」
「おあう!」
予想外の出来事に焦って携帯を吹っ飛ばしてしまった。
「あ、い、いいけど」
答えた瞬間、ドアノブが回され、そろりと渚が顔を覗かせる。
「なんだよ、入れよ」
「……健吾の部屋って考えたらドキドキして」
「……」
またこいつは…何言ってんだ。俺らは幼馴染みだろ。
「ば、ばか、いいから入れよ」
「うん」
そうして渚は部屋に入る。
その瞬間。

ゴクッ

つい喉が鳴ってしまった。
やば、聞こえたかな。

どうやら渚のやつは、先に風呂に入っていたみたいだ。
なんだかツヤツヤしていて、石鹸のいい香りがする。

しかし、なにより俺を焦らせたのはその格好だ。
渚は俺のタンクトップを着ていた。
身長があまり変わらないから似合ってはいるけど…やっぱり胸があるから窮屈みたいだし。
露出は多いし、風呂上がりだし。
なにより、俺の服って……

なんかエッチじゃないか!!

初めて会ったときもタンクトップだったけど、ドキドキなんてしなかった。

「ど、どうしたんだぁ?」
うわ、語尾が上がって情けない声になった。
「……お風呂先にもらっちゃったの。健吾入っていいわよ」
「あ、ああ、そんなことか。さんきゅ」
そう言って、着替えを準備する。
「……昨日は着いたのが夜だっから予約できなくて、仕方なく激安のホテルに泊まったの、そしたらシャワーのお湯が出なくて最悪!やっとさっぱりできたわ」
渚は場を和ませようとしているのか、明るい声で話し始めた。
「はは、それはよかった」
「……あ、最小限の荷物で来ちゃったから…ごめんけど服、借りてるわ」
「あ、ああ、タンクトップか、いいよ」
また先程の光景を思い出してしまい、振り返らずに背中を向けたままで答えた。
「あのさ、お風呂上がったら、話さない?昔のこととか、近況とか」
「いいよ、じゃあ行ってくる」
俺は素っ気無い返事をして部屋を出た。

その数分後、俺は渚のあとの風呂だということに気付いて、また焦ってしまうのだった。

ごめん、桜さん。

俺も男なんです。
それもヘタレの。


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