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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第26話・宴の後に》-9

「わー、何かエロいね」
「うん。言葉にできないね」
「そうだね。これを表現したら、ジャンルを恋愛から官能へと移さないといけないくらいだね」
「でも、たまにいるよね。酔うとキス魔になる人」
「うん。特に女性に多いって聞くね」
「あ、シイタケが石化してる」
「ホントだ。ダメだよシイタケ。ちゃんと両の眼を見開いて現実を受け入れなきゃ」

あまりのショックに固まってしまった武慶を双子があれこれいじっていると、ようやく希早紀が眞燈瑠の口を解放した。

「…ち、違うッス…これは…ふぁ、ファーストキスじゃないッスよ…の、ノーカウントッスよ〜…」

バタン。
ぐるぐると眼を回して眞燈瑠が倒れる。
そして、振り向いた希早紀の瞳が楓と千夜子を捉える。
二人の背筋にゾクリとした悪寒が流れた。
その引きつった顔を見て、希早紀は妖しい笑みを浮かべると、ちろっと舌を出して唇を舐めた。

「「ひ、ひぃ!」」
「ふふふ…♪」

じわじわと追い詰めるように希早紀が近づく。

「ち、千夜子殿!き、今日は休戦としませぬか!」
「あ、アタシも同じことを考えてた!」
「き、希早紀!ま、まずは大きく深呼吸をしてだな…」
「お、落ち着け!あ、アタシなんかより小鳥遊や、黒鵺の方が……って、いねぇ!!」
「よく見れば朧殿も!!」
「あ、あの性悪ー!」

いつの間にか、刃梛枷と朧はこの場から姿を消していた。
誰にも気付かれなかったのは、さすが忍者と言うべきか…

「んふふふ…♪」

そうこうしている間にも、希早紀はじわりじわりと近寄って来る。

「「い、いやぁああああああ!!」」

二人の叫びが響き渡った。

(仕方ない…)

疾風は心で呟くと、周りを見回した。
彼方はいつの間にか潰れてるし、間宮兄弟は放心状態の武慶で遊ぶのに夢中になっている。

(今なら大丈夫)

そう思った瞬間に疾風の姿が消え、すぐに希早紀の背後に現れる。
そして、その首筋をトンッ、と軽く打った。

「はにゃ!?」

ぐらりと希早紀の身体が傾き、そのまま差し出された疾風の腕の中に落ちた。

「ふぅ…」

やれやれと一息吐く。

「ん?希早紀潰れたの?」
「なんだ。これからがいいところだったのに」
「まあ、時間も時間だから、これでお開きにしようか」
「「はーい」」

そう言うと間宮兄弟は自分たちの部屋へと帰っていった。

「ほら、楓と先輩も自分の部屋に……って…」

背後を振り返ったところで、疾風が見たものは折り重なるようにして潰れている楓と千夜子だった。
無理もない話である。楓は結構飲んでいたし、千夜子はあまり飲んでいなかったが、さっきの一件で叫んだり、激しく逃げようとしていたのだから、ここに来て一気にアルコールが回ったのだろう。
冷静に周りを見渡せば、正気なのは自分だけ。

「…あはは…」

温泉で流したはずの疲れが、両肩へと戻ってくるのを感じ、疾風は引きつった笑みを浮かべるのだった。


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