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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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高崎龍之介の悩み 〜女難〜-13

龍之介は顔を上げ、熱っぽい眼差しを美弥へ向ける。
「もっと美弥を、感じたい……」
「……龍之介」
 美弥はぎゅっと龍之介を抱き締めてから、体をずらして唇を合わせた。
 舌を伸ばし、龍之介の口腔内へ侵入させる。
「っ……!」
 びく!と震えてたじろいだ龍之介だが、すぐにキスへ応えた。
 美弥が主導するディープキスに、龍之介は恍惚とする。
「ん、ん……ふぅ……」
 しばらくして苦しくなったのか、美弥がキスを中断して喘いだ。
 喘ぐ美弥の唇を、龍之介が塞ぐ。
「んんぅ……!」
 ぎゅ、と美弥の手が龍之介の服を掴んだ。
 お返しとばかりに舌で激しく美弥を攻める龍之介へ、美弥が反撃する。
 互いの唾液を吸い合い、舌を絡め、舐め回し……。
「……っぷあ!」
 とうとう美弥が唇を離し、降参した。
「ん……!」
 龍之介が再び美弥の唇を追い掛けて、さらに蹂躙する。
「ぅぷっ……あ、駄目……もう……!」
「まさかキスだけでイキそう?」
 龍之介は、唇と舌を美弥の頬に滑らせた。
 ふるふると、美弥は首を横に振る。
「気持ち良過ぎて、歯止め利かなくなりそう……」
 龍之介がふ、と微笑んだ。
「いいよ。利かなくなっても」
「でも……そろそろ、竜彦さんが帰って来る頃でしょ?」
 美弥の言葉に、龍之介は顔をしかめる。
 薄明かりの中で時計を見ると、十時を多少回った時刻だ。
 竜彦の勤務先であるフレンチレストランの閉店時刻が、九時。
 その後色々あって、店を出るのはどんなに早くても九時半を過ぎるだろう。
 そこから駅に行って電車に乗り込み、家まで一番近い駅で降りて……。
 仮にどこかに寄ったりしたとしても、確かに竜彦の帰宅時間が近い。
「む〜……」
 いきなり現実的な問題を突き付けられ、龍之介は呻いた。
「あ?」
 そんな現実問題解決の手段が、龍之介の携帯に届く。
 龍之介は鳴り出した携帯を手に取った。
「兄さん?」
『おぅ』
 電話に出ると、竜彦の声が聞こえて来る。
『わりぃ。話が盛り上がっちゃって、これから長野と宮子と、完徹パーティー開く事になっちまったんだ』
「か、完徹パーティー?」
『酒飲みまくって、一番最初にツブれた奴が飲み代払うっつー、ヂゴクのパーティーだ』
 甲乙つけがたい酒豪が三人揃って、そんなパーティーは催すとは……。
 恐ろしくて、龍之介は身震いした。
『ま、そんな訳だからさ。戸締りよろ…………龍之介?』
「ん?」
 竜彦の声が、緊張を帯びる。
『声の調子、おかしいぞ。大丈夫か?』
「……大丈夫だよ。隣に、美弥がいるから」
『……そっか』
 肩から力の抜けた声がして、龍之介は安堵した。
『じゃあ、ちょうど良かったな。じゃ、おやすみ』
「おやすみ」
 電話を切ると、龍之介は様子を窺っていた美弥に抱き着く。
「兄さん、今夜は帰って来ないよ」
 美弥は思わず苦笑した。
「世の中って……うまくいくものなのね」
 二人は、再び唇を貪り合う。
「んぅ、うんん……うん、ん……!」
 今度の美弥は竜彦という心配の種がなくなったおかげで、艶っぽい声を出し始めた。
「はぁ……ん!」
 龍之介が耳や顎を舐めながら首筋を爪先で優しく引っ掻くと、美弥は一際なまめかしい声を出す。
「ん……りゅう……」
 美弥は龍之介の肩を掴み、動きを止めさせた。
「もしかして……嫌?」
 名残惜しげに首筋から唇を離し、龍之介は尋ねる。
「そうじゃないよ……」
 龍之介の言葉を否定してから、美弥はむっくり起き上がった。
 うつむきがちな顔で、美弥は龍之介を見る。
「今日は、その……い、色々あって、疲れたでしょ?だから、その……わ、わた、私が……し、してあげたいなって……だ、駄目?」
 つっかえながらの美弥の台詞に龍之介は驚いた顔をしたが……微笑んで、体を横たえた。
「じゃ、お任せしようか」
 そう言うと、美弥はホッとしたように頷く。
「ん」
「と、その前に……」
 龍之介は呟いて、着ている物を脱いだ。
「美弥も」
 囁き声に、美弥は顔を赤くして頷く。
 ぶかぶかの服を脱ぐと、薄明かりの中でも眩しい程に白い肌が現れた。
 普段の二人は龍之介の好みで、部屋の明かりを点けて肌を合わせている。
 その方が視力の弱い龍之介でも喘ぐ美弥の可愛いくも艶っぽい顔を、離れた場所からでもしっかり眺める事ができるからだ。
 だがこうして薄明かりの中で眺める美弥というのも、普段とは違う魅力を見せてくれて新鮮である。
「りゅう……」
 美弥はそっと、龍之介と唇を重ねた。


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