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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第11章-2

だが…
さくらが、ベッドの上で小さな声をあげる。九重を手にすれば、雄々しいとさえ形容できる戦い振りを見せる少女が、不意に小さく、いたいけな生き物に見える。
あれから、幾つの戦いを切り抜けて来たか…。その度にさくらに助けられる。その度に、自分の弱さが露呈する。そして、その弱さを補い、克服させてくれる彼女が居た。これ以上心配をかけたくなくて、仕事のことは話していない。だが、時期に何もかも分かちあう日が来るのだろう…過去も、未来も。


彼女への、自らの感情が強まるに連れて、北斗も変貌して行った。皿の様に円い形で現われた北斗は、いまや縦に伸びた大盾となった。この事は、さくらの言うように我々の関係と繋がっているらしい。さくらの九重は、闘うごとに刃が鋭く、さらに強くなってゆく。戦力になるのは喜ばしいが…さくらが言うには九重は、薙刀とは別のものに「成長」したがっているようだと………あの武器たちは、我々に何を伝えようとしているのだろう?

その時、窓の外に……

++++++++++++++

悲しそうな声。何がそんなに悲しいの、九重……?

―さくら、わかっているよね、わたしたちは、いまのままではただしくない。

ええ、解るよ九重。あなた達は、さらに姿を変えていく。
―さくら、あなたにもきっとわかる。わたしのことばの ほんとうの いみが ……

本当の?本当の意味って…待って、九重!解んない…教えて…

「さくら…」
誰かが呼んでる…邪魔しないで、九重が遠ざかる……
「さくら、起きろ!」
「ん…ぁ…つむ…じ?」
起き上がる。布団の隙間から、空気が一気に忍び込む。眠気も何も吹っ飛んで叫んだ。
「…って、寒っ!!何?窓でも開けて…」


目があう。ベッドの前に立っている彼女は上から下まで、真白…その女(ひと)の正体は、一目みただけでわかった。
「突然押しかけて、悪かったね、姉ちゃん。あたしはさ、まぁ、見りゃわかるか!雪女の氷雨(ひさめ)っての。」
そう言って、あははと笑った。話す度に吐き出される冷気が、部屋の温度を1℃ずつ下げていった。
正体はわかった。なんともイメージと異なるが。



彼女は、古の雪女のイメージを180度回転させて色をつけたようないでたちだった。

真っ白で、短い髪の毛は逆立ち、目の周りはすすでも塗ったみたいに真っ黒で、鼻にピアス、耳にはもっとピアス、へそにまでピアスと来た。ズタズタの服は、色をつけたならきっと赤と黒が中心の「パンクロック」風だ。あとにも先にも、こんな雪女とはお目にかかれないに違いない。それとも、最近はみんなこうなのか…。

彼女の傍らには、真っ黒な着物に、刀を帯びて髪を後ろでまとめて髷(まげ)にした武士の姿。面妖な面をかぶっているため顔は見えない。

「あたしの名前は氷雨(ひさめ)。んで、こっちがダチの油良(ゆら)。」

傍らにいた鎧武者が、面を取って顔を上げる。その顔は、いかにも妖怪の類。遠くから見れば人間のように見えても、すれ違うほど近くになれば、ハッとその異変に気づくはずだ。


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