reality ability‐第4話‐南の草原、wind grassland‐-3
〈バリン!!!〉
刺された音ではなかった。音の真実は皇希の左肋に当たって砕けた剣の音だった。皇希の左肋はなんともない。かすり傷すらない。
時が遅くなる。剣の破片はゆっくりゆっくり落ち、辺りの神々は驚き、凰輝の動きも遅く感じる。織音は目を疑うように口を開けながら、右手を振り切ろうとする。
問題の皇希は表情、いや、動く様子も無く、落ちていく剣の破片を真剣に見ていた。そして、この長く思えた時間は、時は元の動きに戻る。
〈ガシャガシャ‥‥〉
破片は辺りの地に着く。凰輝は皇希に近付き、織音は逆に離れていく。辺りの神々はガヤガヤと騒ぎ始めた。
「皇希君!‥‥大丈夫か?」
「大丈夫です。‥織音?‥頭は冷えたか?」
「えっ!?‥‥う‥‥あ‥‥え?」
皇希は少し笑顔になり、織音に言った。織音は激しく動揺してしまい言葉が詰まる。
「‥‥自分の身ぐらい自分で守るって言ったろ?‥‥」
「‥‥うん‥‥」
確かに言った。皇希はこの事の為にこういった行動を織音にさせたのか?‥‥それとも‥‥?
「だから、俺は一人で行く。あの人‥‥あの神にもう一度会う為にも時間が無いから‥‥」
「えっ??」
「‥なんでもない。」
「‥‥‥!」
皇希は意味深な言葉を言った。織音はキョトンとしたが、今の言葉に凰輝は少し驚いていたようだ。
「とりあえずだ。織音は織音の方を頼む。」
「‥何よ!意味が解らないわよ!?」
結局、口喧嘩が始まり始める。戦いの意味がなかった。が、
「織音様。ここは落ち着いてください。皇希君に任せると言っていましたよね。運命神である貴女が彼の正体を少しは知っているはずですし。」
「‥‥何よ!凰輝は皇希に死なせたいの!?」
織音の標準が凰輝に向いた。‥‥損な役だ。
「そういう事ではありません。しかし、皇希君はきっと貴女に話すはずです。彼は優しいですからね。」
凰輝は皇希を見た。皇希は顔を反らし、舌打ちをして何処かへと歩き始める。
「‥‥‥」
「では、そろそろ出発してください。時間ですよ?」
「‥‥ふん!」
織音は怒りながらも東側の正門へと歩く。凰輝は少し見届けてから、皇希に向かって走り始めた。かくして、この場の喧嘩が終わった‥‥?