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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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ICHIZU…F-5

「オマエじゃない!バッテリーを替えるんだ。伝令で主審に伝えてこい!」

「ハイッ!」

(なんだ!やっと出番と思ったのに)

自分の勘違いに顔を赤らめながらベンチを飛び出すと、一旦、帽子を取って挨拶してから主審の方へ駆けて行った。

「1番と13番、2番と14番、8番と12番を交代します」

ブルペンで投げていた直也とキャッチャーの山下が榊に呼ばれた。

「二人で思いっ切りやってこい!後は上野がいるからな」

「ハイッ!」

二人はグランドに駆けて行く。
長谷見と交代した湯田もセンターまで駆けて行った。


プレートに置かれたボールをひろい上げ、マウンドをならす直也。彼も兄、信也と同じく歩幅を測る。
直也の場合は6歩ちょうど。おまけに信也よりも10センチ近く背が低いため、大分手前に窪みを作る。

右足でプレートを踏み、左足はプレートから随分後に下げる。両手を高くあげて反らして振り降ろし、その反動を利用して左脚を高く上げた。
左ヒザが胸に触れるほど上げてから後に向かって空を蹴る。
一連の動きから軸足である右足に体重を乗せてから前方に体重移動させる。身体が開くのをギリギリまでガマンして、巻いたゼンマイを一気に解放するように身体を開く。
腕を拡げ、胸を弓の様に大きく反らせてから腰をひねる。
ボールを持つ右腕がムチのようにしなって遅れて出てきたかと思うと、一気に振り抜かれた。

〈ガシャン!〉

放たれたボールは山下の遥か上を通ってバック・ネットにぶつかった。

山下が急いでボールを捕りに行き、返球する。そして肩をまわして見せた。〈肩の力を抜け〉というジェスチャーだ。

「どこ投げてんだ!!兄貴みたいにビシッとやれーーっ!」

サード・ベンチからヤジが飛ぶ。佳代だ。

(あのバカ……練習試合じゃねぇんだぞ)

メンバーは慌てて佳代の口を塞ぐとベンチの奥に連れて行こうとしたその時、3塁審判がサード・ベンチに来てから榊に注意した。

「今度暴言を吐いたら退場にしますよ!」

「すいませんでした!以後、気をつけますので…」

榊は何度も頭を下げる。
審判が引き上げたのを見てから、

「澤田!」

「ハイッ!!」

佳代は榊の声に、亀のように頭をすくめる。


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