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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第10章-12

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流星より迅く、西の空へ消えていく二人を見ながら、小さなため息をつく。白い息が一瞬その場に留まり、また溶けていった。

前日に降った雨は、アスファルトを濡らしたまま凍り、弱い日差しはそれを溶かす力も持っていなかった。

家までの道を、ゆっくりとした足取りで進む。飃は今、どんなことを考えているんだろう、なんて考えながら、彼の顔を見ると、飃の目とあった。何を考えているにせよ、具合は良いとは言えなさそうだ。かく言う私も、さっきから妙ににおいに敏感になっている。

家に入るとすぐに、飃はベッドに突っ伏した。

「大丈夫…?」

「む…気分が悪い…」

さっき、七番の鎌が刺さった腕をさする。

「おそらくは、毒だろう。さくら、お前も切られたではないか…何か異変はないか?」

「うん…と、ちょっと匂いに敏感になってるくらい、かな…。」

だるそうに仰向けになる。荒い息はいかにも熱を帯び、額に浮かぶ汗が筋になって伝い落ちてゆく。飃の表情は私より重い。どんな毒を盛られたにしろかなり苦しそうだ。

「どうしたらいい?」

私はなるべくうろたえないように言った。両手は救急箱の中身をかき回している。バファリン、イソジン、マキロン・・・こういう事態に陥って、初めて自分の家にあるものがいかに自分たちにとって役に立たないか気づくのだ。キンカンなんて、夏しか役に立たないじゃない!



「…眠る…その前に…」

私の焦りに終止符を打ったのは、おなじみのものだった。

「お酒?お酒ね!」

私は急いで台所に行って、昨日の残りの日本酒をコップについで持ってきた。飃は、私が差し出したコップを良いほうの手で取り、まるでそれが水であるかのように一気に飲み干すと、眠たげな目でまた私を見た。

「えーと…瓶ごと?」

彼は黙ってうなずいた。



半分ほど残っていた一升瓶の中身は、見る見るうちに消えた。つい錯覚しそうになる。「これは水か?」と。飃はよっぽどの酒豪だ。

いったい何歳から酒を飲んでいたことやら…。



飃が飲み始めてから数時間。酒の効果ははっきり現れた。少なくともよく眠っているから、腕のだるさは薄れたのだろう。彼の寝顔を傍らに座って眺めながら、長い髪を手で梳いていた。すると…


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