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千から始まり零に繋がる物語
【ファンタジー その他小説】

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千から始まり零に繋がる物語-3

──あなたが望んだ真実は、あなたの心理では変えられない──

男は、いよいよ落胆した。
この飽和した世界に生きる価値など皆無……つまり、自らの価値すらも、皆無なのだ。男の落胆は、果して絶大だった。

──では、せめて、この人形の意味だけでも教えてはくれぬか──

男の最期の悲願は、しかし果たされた。

──よいでしょう。彼女は、そう、あなたがあの日『現実に生きる』ことを選んでいた場合の、未来のあなたの『娘』です──

嗚呼、なんという皮肉……
そう、今まで何の意味も無いと思っていたその人形の真の姿は、男の娘だったのだ。
男は、泣いた。
泣いて、泣いて、しかし、時間も何も戻らない。
ただただ泣いて、その晩、彼は命を絶った…………




……あなたには、解ったかしら?その男の狂った欲望が招いた、最悪の結末を……
千を捨てた男に残ったのは、壱ですらなく、零だったの。
彼は、自業自得と言われても何も言えないわ。それだけの罪を犯したのですもの。
けれど、真に罪なのは、それに気付けなかった彼の心なの。
彼が、その弱い心に打ち勝てたなら、それは起きなかったのだから。
感想は要らないわ、お嬢さん。もうこんな時間よ、早くお家にお帰りなさいな。
……ええ、ありがとう、きっとその物語を伝えてね。あなたの、心から大切な誰かに。
それじゃ、おやすみなさい。
…………どうしたの?帰らないの?
……………………え?何故それを見た当事者が居ないのにその物語は伝えられてきたのか、ですって?
それはね、居たのよ、唯一の当事者が…………
残念だけれど、それだけは教えられないわ。
……ええ、ありがとう、また来てくれるのね。嬉しいわ。
そうね、今日はもうお別れ…………良い夢を見るのよ。おやすみなさい、お嬢さん…………


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