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Penetration
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Penetration-4

「詳しい見積もり金額は調査後になりますが、おっしゃった内容の工事ですと500万プラスマイナス30万くらいでしょうか」

市営住宅の管理人と打ち合わせる仁科。工事は外壁の補修工事だった。

「調査はいつから入るの?」

と、管理人。

「そうですね。来週末から一週間の予定です。なにしろこれだけの棟ですから」

「ところで金額の件なんだが」

「はい?」

「おたくとは竣工以来の付き合いだし、出来ればおたくにやってもらいたいんだけど…そのなあ…」

管理人の喋りが急に歯切れが悪くなった。

(なるほど…キック・バックの話か…)

仁科はつくり笑いを浮かべると、

「そのあたりは食事をしながらどうです?マネージャーも同行させますから。その時に」

管理人は満面の笑みをたたえた。

打ち合わせが終わりクルマに乗り込む仁科。ヘドが出そうだった。

(あんなクソジジイの機嫌取りせにゃならんとは…)

だが、これが現実だった。建築業会は冬の時代。小さくなったパイを奪いあうために客を接待と称して〈飲ませ食わせ買わせ〉は当たり前。時には多少の現ナマをもつかませる。

自己嫌悪に陥る仁科。

クルマは次の営業先に向かった。


「それでは、何卒宜しくお願い致します」

深々と頭を下げて客先の事務所を後にする仁科。
これで今日の営業廻りは終わった。仁科はクルマに乗り込むと、軽くネクタイを緩める。

ふと、あの喫茶店の女の子の顔がよぎる。

(これが現実なんだぜ……)

クルマを駐車場から出し、路地を走らせると幹線道路が見える。仁科は左折させて流れに乗せた。

(そう言えば、この辺りだったな)

仁科はしばらくクルマを走らせる。
前方に看板が見えた。仁科は左折させると、あの日と同じようにクルマを駐車場に入れる。
駐車場に1台のクルマも停まっていないのも、あの日と同じだった。

ドアーを潜る。


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