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名探偵の条件―事件編―
【推理 推理小説】

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名探偵の条件―事件編―-2

「すっかり遅くなっちゃった…。二人共まだ待ってるのかな?」
先に帰ってといって、二人が帰ったためしがない。
「心配性なんだから…」
ぶつぶつ呟きながら教室の扉を開ける。
『っ!?』
目の前に、それはいた。
黒いマントにアフリカ土産みたいな仮面、カラフルな髪はかつらか?
「…………」
そいつが、ゆっくりと左手を上げる。その手の中には…サバイバルナイフ!?
「いっ…」
体が、動かない! 
振り下ろされるナイフから、目を逸らすこともできず、私は固まったまま…
「!?」
しかし、それが触れる寸前に私の足は力を無くして崩れ落ちた。 
ヒユッ! 
耳元を切っ先が掠める音。(こっ、殺される!)
そう思った瞬間、急に声だけが自由を取り戻した。 「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」あらんかぎりの力で叫ぶ!すると、再びナイフを構え直していたマント仮面は、急にこちらへ向かって走りだした。 
「ひっ!」
しかし、座り込む私を無視して、そのまま階段へ。 足音が遠ざかって…教室には、静寂が戻った。
私は、不意に自分がごみ箱を抱えたままだったのに気が付いて、戻すために立ち上がった。混乱から立ち直りきれず、頭は空っぽ。
「あ…あれ?」
不意に、涙が頬を伝って落ちた。
「ふっ…」
泣こう!もうあいつはいないし、教室には他に人の姿もない。みっともなく大泣きしたって…
「ふぇっ!」
泣くぞ!と、勢い良く息を吸い込んだ瞬間、 
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」「!!?」
声は、先ほど私が上げたものと同じ、恐怖に引きつったものだった。 
「ぐっ!」
私はバカだ!何で動いてしまうんだろう?私が行って何になる?役に立たないのは明白だ。なのに…
「足が勝手に動くのよぉぉぉぉ!」
教室を飛び出し、階段を転がるように駆け降りる。悲鳴の場所がはっきりしてるわけじゃない。さっきのマント仮面は階段に向かった。三階より上はないのだから、残るは二階か一階。でも、一階にはまだ生徒がたくさん残ってるから…
「三年教室棟にいるはずっ!」
階段の手摺りを使って体を反転させる。と、
ドンッ!
突然後ろからタックルされてつんのめる。
「ひっ!」
「うわっ!っと…空!」
声は、幼い頃から聞き慣れたものだった。
「り、り、りぃくぅ!?」
声がひっくりかえった。
(心臓、止まった…)
「よかった…さっきの悲鳴は、空じゃなかったんだね…」
私を引き起こしながら、海がホッとしたように言った。
(これは…うかつにさっきのこと言えないな)
「そうだ…悲鳴!」
さっきのマントを思い出して、私は再び走りだす。 「あっ、空!」
「どこから聞こえたか、分かるの?」
後ろに付いてくる声に、私は振り向かずに答える。
「片っ端から確認する、手分けしよう!私は三年の教室を見るから…」
『ダメ!』
ハモリでダメだし…。
「空は渡り廊下通って特別教室を見て回ってくれ!」「陸、一組から頼んだよ」「OK!」
「あっ!ちょっと二人とも!」
…聞いてないし。 
仕方なく、私は長い廊下の中央にある渡り廊下を通って、特別教室が集まる西棟へ向かった。


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