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堕天使と殺人鬼
【二次創作 その他小説】

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堕天使と殺人鬼--第13話---2

「はい、会場はこんな風にいくつものエリアで区分されています。このエリア分けにはプログラムを進行させるための重要な役割があって……はい、じゃあそこで君達の首に付いてる物にちょっと注目して下さい。」
 恐る恐ると言ったように晴弥は一度目線を下に落とすと、がっちりと首周りに食い込んでいる銀色のそれに、右手を差し込んで触れた。冷たい感触が指先に伝わって来る。
 晴弥は顔を上げて三木原の次の言葉を待った。
「……それは『オガサワラ五号』と言って、共和国の技術を最大限に活かした最新型の首輪で、君達が何処で何をしているのかを正確に僕達に報せてくれる代物です。完全防水、耐ショック性で、こちらから機能停止の電波を送らない限り外すことは絶対に不可能です。無理にでも外そうとすると――どうなるかは、先程金沢さんが身を持って教えてくれましたね。」
 何人かが、ひゅっと短く息を吸い込んだ。
 三木原が不適な笑みを浮かべ、ぐるりと教室を見渡す。
「そうです。さっきみたいに首輪が爆発して、一瞬であの世行きになってしまいます。爆発する条件にもいくつかあって……一つは今言ったように自力で外そうとした場合、こちらから電波を送った場合と、それからもう一つは――はい、じゃあもう一回黒板に注目して。」
 三木原は言いながら、黒板の地図が全員に見えるよう右端の方へ移動した。
「今みんなが注目しているこの地図のエリアは、プログラムが延長されるにつれてみんなの行動範囲が狭くなり、合流し易くなるように作られた物です。午前と午後の零時と六時に死亡者発表の放送を流すから……それと一緒に、この『立ち入り禁止エリア』部分と言うのも発表します。……発表したエリアにいた奴はすぐに移動しろよ。じゃないと、電波が自動的に残っていた奴に送信されて――やはり、あんな風になってしまいます。」
 三木原がそう言ってちらりと、無残に投げ出されている金沢麻也を目線でしらしめるが、三木原の目線の先を追い掛けた者は恐らく一人もいない。もはや全員が、自分たちの立場や状況を受け入れていた。それで三木原の説明が何を意味するのか、言われる前から安易に予想出来てしまうのだった。
「ちなみに今みんながいる場所は……」
 中央からやや上、エリアで言うと調度C=5の部分に書かれた先程の罰印をチョークの先端で指した。
「ここです。……じゃあここでちょっとこの建物の説明をしようかな。」
 三木原は煙草を取り出すと、その辺でごった返しになっている適当な椅子を引き寄せ、ゆっくりと越しかけながらジッポライターで火をつけた。
 すらりと長い脚を組みながら、おもむろに語り始める。
「うーん、何から話そうかな……。とりあえず、まずこの建物は多分みんなが想像してる通り、この島の学校です。……って言っても古すぎて廃校になったところなんだけどね……。それで……ちょっとあれを見てくれるかな。」
 そう言って三木原が指したのは、鉄板が満遍なく貼られた窓だった。
「あれが何なのか、疑問だっただろう? あれは……まあ簡単に言うと、万が一君達がここを出発した後に支給された武器で攻撃してきた時の応急処置……みたいなものかな。まあ、そんなことする奴はすぐ首輪爆発させるけど。……で、今ちらっと触れた支給武器について説明します。」
 まだ半分も残っている煙草を揉み消しながら、背後にいる専守防衛兵士達に向かって三木原は左手をひらひらと振った。
 三人の兵士の内一人――中原茂だっただろうか――が教室の前の入口を開き、何か妙な手信号を送ると、間入れず更にニ名ほどの兵士が高く積み上げられた荷台を引きずりながら姿を現したが、すぐに出て行く。入口から少しだけ見えた廊下に、また数人の兵士を見かけた。
 三木原が荷台から一つだけ荷物を下ろすと、兵士達の迷彩服と同じ色をした深い緑のデイパックを全員に見えるように上へ掲げる。
「これはみんなが出発する時に配る物です。今から中身を見せます。」
 三木原は再び腰を下ろすと、膝の上でデイパックのファスナーを開き中の物を順に取り出した。


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