投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 31 やっぱすっきゃねん! 33 やっぱすっきゃねん!の最後へ

ICHIZU…D-8

「ストライク・ワン!」

ボールを返球する山崎は考える。
(今のボールに反応しなかったな…何を狙ってんだ?)

山崎が再びサインを出す。信也は頷くと、今度は早いモーションから投げた。山崎は素早く立ち上がった。スクイズを警戒して外したつもりだった。
だが、信也のボールは山崎の構えた位置より内側に入ってしまった。大森はそのボールを叩いた。

打球は高く上がった。センターが定位置からゆっくりと前進してくる。佳代はベースに左足をかける。捕った瞬間、ホームへ走るタッチ・アップの構えだ。

だが、センターはなおも前進する。ボールが落ちてきた。佳代の左足に力が入る。

(あそこじゃタッチ・アップは無理だ)

佳代がそう思った時、3塁コーチャーの宇野が、〈行くぞ!〉と声を掛けた。

(どうなっても知らない…)

ボールを捕った瞬間、佳代は左足を蹴った。

「バック!」

山崎が叫ぶ。センターは慌ててホームへボールを投げる。必死に走る佳代。
山崎はホームでブロックする体制で構える。ボールが微妙なタイミングで返って来た。少し右に逸れている。
佳代が山崎のブロックを避けて滑り込む。山崎がボールを捕りタッチに行く。
佳代が左手がホーム・ベースを滑る。山崎が佳代の肩をタッチしてミットを上げてアピールする。

「セーフ!セーフ!」

主審が右手を横に伸ばし、2度コールした。

「奪ったーっ!」

佳代は跳ねるように立ち上がり感情を爆発させた。

「1点奪った!1点奪った!」

ネクスト・サークルの長岡や大森とハイ・タッチをする。

ベンチでは皆がズラリと横に並び両手を出していた。佳代は一人々にタッチすると、今度は取り囲まれ、笑顔で佳代のヘルメットを叩く。手荒い祝福だ。

「イタイ!イタイ!」

佳代は顔をくしゃくしゃにして手荒い祝福を受ける。泥だらけのユニフォームと埃にまみれた顔が雄弁に物語っている。まさに奪い取った1点だった。


眺めていた尚美は〈スゴイ!〉を連発しながら拍手を送っている。となりで見ている有理も拍手をしながら、

「カヨちゃん。何だかいつもと違う」

「そう?」

「何だか…キラキラしてる。凄く楽しそう」

「そうかもね…」


長岡は凡打となり、4回表Bチームの攻撃は終わった。

4回裏。

「まさか先制されるとはな…」

と信也。

「ちょっと気合い入れるか」

山崎はそう言うと、皆をベンチ前に呼び集めて円陣を組む。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 31 やっぱすっきゃねん! 33 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前