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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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ICHIZU…D-5

「いやぁ速いわ!アンタの兄貴は」

悔しさと諦めの混じった笑顔で佳代がそう答える。

「そう簡単に打てるかよ!去年の地区優勝ピッチャーを」

誇らし気に答える直也。佳代はそれが気に入らなかった。

「弟もあれくらい堂々と投げてくれればなぁー!」

イヤミたらしい口調で言い放つ。
先ほどの事もあり、直也は言い返さず押し黙ってしまった。その顔がおかしくて、佳代と山下は声をあげて笑った。


仲谷をカーブ2球でツー・ストライクと追い込むと、最後は足元に落ちるスライダーで三振に、3番大森もセンター・フライに仕留められ結局、3者凡退に終わった。
両チームは3回まで一人のランナーも許す事なく試合が進んだ。

兄信也はキレのあるストレートと変化鋭いスライダーで三振を奪っていくのに対し、弟直也はヒット性の打球を打たれながらも、野手の守りに助けられて何とか抑えていた。

4回表。

「喉渇いた〜!」

佳代は駆け足でベンチに戻ると、奥に置かれたスポーツ・ドリンクをコップで飲んでいた。

「炎天下に大変だね」

声が掛かる。驚いて顔を上げると、そこには尚美と有理が立っていた。

「ナオちゃん!ユリちゃん!」

驚きと嬉しさが入り混じった声で答える佳代。有理は手でヒサシを作りながら、

「生徒会の会合が長びいちゃって…ちょうどナオちゃんと会ったから…」

「そう!今日はレギュラー相手に練習試合なんだ!」

「スコアは?」

尚美の問いかけに〈今のところは〉と言い掛けて佳代はいたずらっぽい顔をすると、直也を呼んだ。
呼ばれた直也は〈なんだ?〉と佳代の傍に寄ると、そこに居た有理を見て驚く。

「あ…相田…?」

佳代と尚美はニヤニヤ笑っている。直也の肩をポンッと叩くと、佳代は有理に言った。

「直也が先発ピッチャーなんだ!そのおかげで0点に抑えてるよ」

「ヘェッ!凄いじゃない川口君!」

直也の顔がみるみる赤くなる。佳代は〈じゃあ私、打順だから〉と言ってベンチを後にした。

残された直也。緊張している。尚美はそれを分かっていたが、無視して直也の兄信也を眺めていた。


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