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結界対者
【アクション その他小説】

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結界対者・第二章-5

―3―

 そして昼休み、である。
 間宮の居るクラスは、俺のクラスから二つ向こう側の教室で、俺の居る教室から比べると、少々こ綺麗な印象を受ける。
 担任が女だからだろうか…… いや、もっともそれは今、間宮のクラスの入り口に掲げてある、担当教員の名前の書いてあるプレートを見た時に判った事だが。
昼休みとはいえ、教室の中には何人かの生徒の姿があって、俺は開け放たれた入り口から、その中に間宮の姿を探した。
 しかし、うまく様子が掴めず、思わず不自然に体を動かしてしまう。
 そんな俺をみかねたのか、入り口の近くに居た髪の長い女の子が

「あの…… 何か?」

と、怪訝な表情を向けた。

「いえ、間宮さん、居るかな?」

 尋ねた瞬間に、ぱぁっと明るい表情を見せて

「ああ、アナタね? セリの親戚の…… そうそう、転校生!」

と、感嘆の声をあげた。

「し、親戚?」
「うんうん、今朝セリが、珍しく誰かと、ていうか男の子と歩いていたから、気になって誰なのか訊いたのね?
そしたら転校生で親戚だって……」

 なるほど、そういう事にしておけば、学校の中で一緒に居ても、不自然ではないって事か。
 間宮のヤツ、頭いいな……

「あ、そうそう、セリはね? いつも一人で何処かに行っちゃうから…… う〜ん、今の時間なら、学食かな?」
「そ、そう…… うん、ありがとう…… あ!そうだ、俺は柊、柊イクトって言うんだ」

 世話になったのだから、名前くらい名乗ろうと思う。
 別に目の前の、その女の子が、ちょっと可愛いかったからとかじゃない。
 礼儀だ、あくまでも礼儀!

「私は、春日ミノリ。セリとは一応友達…… のつもりなんだけどね」

 苦笑いを浮かべながら、悪戯っぽく舌を出す春日さんの気持ちが、なんとなく解る様な気がする。
 要するに、間宮はいつも、あんな感じで過ごしているって事だ。

「ああ、気にしないで? アイツ、昔から変わってるから」

 口からデマカセ。
 まあ、勝手に親戚にしてくれた対価としては安いもんだろ。
 それにしても、間宮にも一応、友達らしき人間が居るという事が解って、ちょっとだけ安心したりする。
 いや、そもそも、心配してやる義理もないのだが。
 俺は、春日さんに別れを告げると、足早に学食へと向かった。


 学食、と呼ばれるその場所は、まるで全校生徒を一ヶ所に集めたのではないかという位に込み合っていて、その中から一人の女子生徒を探しだすのは非常に困難だと容易に判断できる。
 しかし、探さない訳にはいかないから、比較的空いている窓側の通路から、その場所の中程に入り様子を伺う事にした。

 間宮は…… ?

 学食の中を一通り見回す。
 そして間もなく、奥の壁際の席、山盛りのカレーライスを前に、しかめっ顔でスプーンを握る間宮を見付けた。
 これだけ混んでいるのに、間宮の前の席がしっかり空いているってのは、彼女のキャラクターに因る所なのだろうか。


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