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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第5章-8

「颪さん、飃が飲んでたグラス、まだあります?」

「え?あぁ、ありやすけど・・・」

「ねえ、もし毒や何かが入ってたら、飃、気づいたかしら?」

「まあ、何もしなくても服毒自殺しそうな勢いだっ…」

カジマヤは、颪さんににらまれて言葉を切った。

「確かに、酔って血管が膨張すると、鼻の粘膜は腫れる。そうすると、においに鈍感になる事もあるが…。」

「カジマヤ、悪いけど、毒とか…とにかく何か変なにおいがしないか、嗅いでみてくれる…?」

「うん……うん。確かに変なにおいがする。こいつは俺が持ってきた泡盛だからね、間違いないよ。」

――やっぱり!飃は、これで無理やり意識を朦朧とさせられていたんだ!


さくらは急いでさっきのホテルに向かったけど、二人は来ていないという。きっと、あれから場所を変えたんだ。あんな女にだまされるなんて、飃の馬鹿!!

私は、小さくして携帯のストラップと一緒にぶら下げておいた九重に話しかけた。

「九重、九重…」

―なあに、さくら・・・

心なしか、九重の声はか細かった。

「あなたは私の体内から生まれた。北斗もそうよね?」

―そうだよ・・・わたしたちは、さくらとつむじをはんぶんずつもらってこのよにかたちをなしたんだもの…

「北斗が今どこにいるか、わかる?」

―わかるよ。ああ、さくら、飃へのき持ちを、とり戻してくれたんだね・・・

「ええ、まあね。」

私は微笑んだ。数日ぶりの微笑だ。

―うれしいよ、さくら。北斗もとおくで喜んでる。わかるよ。わたしを手のひらにのせて…

のせた。すると、九重は私の手の中で小さくなったまま、コンパスのようにある一方向を指し示した。

「あの、颪さん、それに、カジマヤ…」

ここまで付いてきてくれた二人に、
「有難う!」
お辞儀をして、私は急いで駆け出した。


+++++++++


駆けていくさくらの後姿を見守りながら、カジマヤが言った。

「な?いい子だっていったろ?」

「ああ、本当だなぁ・・・」


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