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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第5章-10

「あの女が、今回の計画について、他のやつと話して居るのを聞いた。目をつぶっていたから解らなかったが…おそらく虫のようなものを使って電話のように話をしていたのだと思う。」

要は…?

「私が無実だって、わかった…?」

って言いたいんだろうけど。

「……すまなかった。」
「…ん?」
「お前を…傷つけてしまって…。」
「そう、だね…」

私は冷静に飃を見つめた。耳はピンと立って、何か決然とした表情を浮かべている。

「さくら、九重を取ってくれ。」

私は素直に手渡した。すると、飃はここのえの刃を自分に向けて…

「飃?!止めて!!」

自分の胸に突き刺した。私は急いで九重を抜いて、飃に駆け寄った。

「何て事を!飃、一体どういう…」
飃の長い指が私の言葉を制した。

「己は、お前と夫婦になった晩に、この九重と北斗に誓った。お前を傷つける奴はこの己が殺すと。」
言葉ははっきりしている。でも、おびただしい血が…
「今は、この戦いが終わるまでは、すまぬが殺されてはやれない。だからさくら…」

私の涙に濡れた頬を、血だらけの手で包んだ。金気臭さが鼻腔を満たしていく。

「これの続きは、戦いが終わった後、お前がやってくれ。いいな?」
「…っ!馬鹿…馬鹿あっ!」
私は泣きじゃくりながら言った。

「私はこんなこと望んじゃいないわよ!飃と一緒にこの戦いを生き延びて、それで、それで…」
「うん・・・?」
飃の声は、優しかった。
「一緒に。。。一緒に……けっ…結婚式、あげたい…なって……。」

「…そうだな。己もそうしたくなってきた。」

私は、洗面所にあったタオルを持ってきて、傷口を押さえた。九重は加減してくれたようで、傷口は本当に薄かった。30分もたったころには、飃の人間離れ(人間じゃないけど)治癒力も手伝って、血はほとんど止まっていた。


「もう。今度のことは…!」ホテルの内装をあらかた見尽くして、ベッドに戻ってきた私は言った。
「悪かった。これは己なりのけじめのつけ方だと思ってくれ。」
「しょうがない奴。」

そして、二人して笑った。本当に、笑い声を上げたのは本当に久しぶり。ぽん。と、飃の胸に顔を預ける。


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