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ホントニホシイモノ。
【エッセイ/詩 その他小説】

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ホントニホシイモノ。-1

あたしは、いつも
自らの手に余る何か、を
手に入れるために、
必死になっていた。

とってつけたような、
不自由さに《美》
というものを、
見いだしていた気がする。
周りの人間の、
哀れみにも似た目に
気付かないフリして、
只、ひたむきに、
自分自身を律して、
美しくある事を、
追い求めていた。

《憧れ》に近づくために、必死だった。


「いつも綺麗ね。」

当たり前でしょ。

「スタイルいいよなぁ。」

そりゃそうよ。

「仕事も出来るしかっこいいよねぇ。」

えぇ、まあね。

「すごく、もてるでしょ?」

もう、
ほっといて。


あたしは、努力を怠ったことなど、ない。
恋にかまけるなんて、ありえない。
ありのまま、が一番いいなんて、そんな戯言には興味がない。

努力して、手に入れる物。

あたしがあたしを誉めてあげる事。

それが一番大事。

他者の認識は、その努力の経過に対する結果でしかない。
ずっと、そう思っていた。

確かに、男に不自由した事なんてない。
彼《みたいな》ものなら、いくらでも居る。
確かに、仕事では一目置かれてる。
業績はいつでも上位。

なのに、何故?
この、敗北感は何?
この、無力感は?

街を歩く、恋人達を見つめては、胸がしめつけられる。
手を繋ぐ二人を、憎いとすら思ってしまう。

あたしには、心を許せる唯一無二など、一つも無い。

追い求めた理想に、
近づけば近づくほど、
喪失感に、苛まれる。


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