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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第3章-3

「さくら、奴らは良くないものだ、塵芥だ。悪いものより生まれ出で、人間を惑わし、闇に引きずり込む。そんな奴らを滅ぼすのが己の喜びだ。悪いことではないだろう?」

「まあ、そうだけどさ…」

口ごもる。明らかに、彼は「狩る喜び」を感じているはずなのだ。顔がいつもより獣じみている。私は、彼に流れている誇り高く、高潔で優しい狗族の血が、それと混ざり合う戦士と獣の血より、一滴でも多くあるように祈った。

「そんな顔をするな。まるで獣を見ているような目つきではないか。」

いわれて、あわてて顔を背ける。私って、そんなに思ったことが顔に出るタイプ?

「なあ…さくら…」

「ん?」

「薙刀の様子を見せてみろ。」

私は、不思議と手になじむ薙刀を飃に渡す。飃は、感じ入ったようにそれを見つめる。最近、こういうことが良くある。羨望の眼差しで、気づくと何分でも見つめている。人のおもちゃを見るときの子供のように。
私はこう思うのだ。

飃は、薙刀のほうをほしかったんじゃないかと。

だって、性格的にも、盾より斬る物のほうが合ってるし。

…まあ、気のせいかもしれないんだけど。

「刃こぼれしてるぞ。」

にやりとこちらを見る。懐中電灯の光の加減で、琥珀のような瞳に怪しい光が差す。

「だ、だって、こんなとこだよ。」

焦る。しかも、こうなった飃を制御できたことがない。

でも、今日は…

「ごめん。疲れちゃってさ…。」

そういう気分じゃないのを、ごまかす。

「嘘をついても、己にはわかる。」

わたしの目を見つめながら、飃が低い声で言う。わたしは目をあわせられない。

「心臓の鼓動が早い、汗の匂いが変わる、目の動き…」

飃が私ににじり寄る。肩を抱く手はあったかいけど、なぜか心地よいと感じられない。

「どうした?」

飃の声は優しい。でも、これって愛情なのだろうか?私を抱くのは、美しい薙刀のため?自分の欲求を満たすため?そんな疑問がふつふつとわきあがる。炭酸の泡のように。そして、ボトルのキャップをひねると、爆発する。

飃の手が、腰に回った。

「やめてったら!」

大きな声が、ホーム中に反響する。

もう、いろんな疑問や、苛立ちや不安が、一気に放たれて、行き場を失っている。

「そうやって、強制しないで!私はあなたの所有物じゃない!」

声が震えて、上ずる。一瞬躊躇した飃が、落ち着いた目で見返してくる。取り乱した私が、馬鹿らしく思えるほど。それが、怒りにますます油を注いだ。


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