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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第3章-1

これで27匹目…。身体が重い…腕が、脚が、棒切れのように強張る。

傍らの飃は呼吸一つ乱さずに、涼しい顔をしている。いや、愉快そうな顔と言おうか。

私の薙刀の腕を磨くために訪れたのは、終電が行ってしまった後の地下鉄の線路、および駅だった。何故わざわざこんなところで練習するのか。私は聞いた。この状況に陥れば誰だって聞く。駅員や警備員の見回りをやり過ごし、整備員の気配を感じるたびに物陰に隠れる。そうまでして…

「何でこんなところで練習するの?」

飃は答えた。今日一日なぜか機嫌がいい。

「「やつら」は人間の負の感情から生まれた存在だ。それ故に、負の感情が漂う場所に多いのだ。」

「地下鉄の線路や駅がその場所なの・・・?」

飃は、暗く長いトンネルの遠くを見透かすように言った。

「…人間とは、哀しいな…いや、愚かだ。」

「え?」

「ここには生きている自然がない、奇麗な空気も、日の光も無い、毎日疲れ果て、動く箱に押し込められ、別の箱に閉じこもり、また箱に乗って帰る…昔はこんな風ではなかった。今はその小さな機械でいつでも呼びだされ、いつでも働く。人の目を気にし、行動する…こんな環境が正の感情を生み出すはずはない。人の生み出した利便が人を盲目にしたのだ。」

虚ろな暗闇に、飃の声がこだまする。飃の言葉を聴いて心がぐらついた。そんな生活が可能だなんて、考えたことも無かったから。多分、時代の変化、最新技術への傾倒は、人間にとってはあまりにも当たり前すぎるのだ。

そのとき、28匹目が、ずるずると、這ってこちらに近づいてきた。そいつはこちらを伺いながら、スライムのように徐々に形を変えてゆく。

「やつら」は、普通の人間の目には見えない。そうすれば、もっと人間に近づけるから。もっと負の感情を吸い込んで、強くなれるから。
もっとも、低級の「やつら」が高度な思考能力を得るには、妖怪や、低級神、それに狗族などの生気を摂る必要があるわけだが。

実際、私の目の前に居るのは、初期の段階から「強さ」の面だけを強化したものだ。

目も、口も…否。そもそも顔がない。もし運悪くこの生き物の姿を目にすることが出来たなら、人間の半分の大きさの塊となってうごめくヘドロのように映るだろう。

そいつは、塊の両脇から長い長い腕を伸ばし、すごいスピードで這ってきた。狗族である飃の生気に反応したのだ。

「来るぞ…構え!」

飃の厳しい声がトンネルを震わせる。私は薙刀を構え、12年間薙刀をやってきてようやくコツをつかみかけた程度の精神統一を行った。敵を見つめたまま、同時に周りの世界を視る技術。1…2、の、
「撥(はっ)!!」

フェイントだった。そいつは、私が薙刀を突き出すタイミングを見計らって、私の頭上にジャンプした。疲弊した私は、その動きに対応できない…

「しまっ…!」

やつにとって私はただの障害物だった。そいつははじめから、飃を狙っていたのだから。


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