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君ふたつ、僕色
【純愛 恋愛小説】

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君ふたつ、僕色-scene1--1

 どうしても、と呟いた。
 それは儚くも、幸せな時間だった......。


*  *  *


 うだるような暑さ。そして、この時期独特の湿っぽい空気。こんな環境の中にいるだけで、地球はこんなに広いのに、どうして僕はこの地域に生まれ落ちたのだろうだとか、どうでもいい事を考えてしまう。
 22歳、初夏。親にも、いい加減しっかりしろ等と言われる。もちろん、出来る事ならそうしたい。こんな時期になっても、まだ就職活動している僕はまさにお先真っ暗、雲行きはこの上なく悪い。何がしたいんだろう。先が曇ったまま、何がしたいのかも分からず、今日もリクルートスーツに身を包んで闇雲に活動するだけ だ。

 暑い。とにかく暑い。どうにかしたい、この暑さ。

 僕はついに、この暑さの中、ビルとビルの間を歩くことにすら疲れて、家に帰ろうと決心する。
 ......これだから、駄目なんだ。僕は。

 バスに乗り込み、少し進むと、いつもの見慣れた景色。だんだん町並みが寂しくなって来る。土曜日の昼間。この暑さの中、外を歩く人間はそんなにいなかった。
 最寄のバス停で降りると、そこからは10分ほど家まで歩かなければならなかった。
 しばらく歩くと、僕が数年前通っていた小学校が現れる。土曜日は学校が休み。いつもは子供達の声で溢れ、騒がしい校庭も、今日は静寂を保っている。
 何気なく、小学校に入ってみたいと思った。そういえば、校内に入るには、誰かの許可が必要なのだろうか? 今まで入る機会も無ければ、入る気も無かったので、その辺のことは分からない。

 校門に近寄ってみる。遠くから見ると、それは閉まっていたが、僕が手をかけて少し力を込めると、青いペンキで塗られた鉄の門が横へスライドする。どうやら、鍵はかかっていないようだ。
 僕の体ほどの幅を開けると、僕はその間へ体を滑り込ませて、学校に侵入する。
 もしかしたら、これは見つかれば、犯罪なのだろうか? 所謂......不法侵入というものか。
 僕は、何だか楽しくなってきて、一人で軽く鼻息を漏らす。とりあえず、暑い。スーツの上着は脱ごう。

 花壇の傍を通り抜け、校舎へと近づく。
 懐かしい。

 この時は、僕もさすがに、校舎には入れないだろうと思っていたので、その辺を軽く歩いて帰るつもりだった。いくら田舎の小学校だとは言え、鍵もかけないほど無防備にはしないだろう。(もっとも、校門の鍵はかかってなかったけれど......)

 ふと、カーテンが揺れているのを発見する。少し奥まった一階の教室。多分、あんな奥の部屋だから鍵をかけ忘れたのだろう。
 僕はその窓に近づいて、カーテンをそっと捲って中を覗きこんでみる。
 誰もいない。
 僕は腕に力を込め、その窓から教室へ侵入する。いいのだろうか。いや、別に悪い事をするつもりはない。だから大丈夫だろう。


 すると、意外にも先客が居た。

「あ、あの...・・・」

 僕が声を出したので、その人は振り返る。相手も驚いているようだ。
 セミロングの髪に、白いTシャツ、七分丈のデニムを履いている。肌は真っ白で、瞳は吸いこまれそうな程の黒。

「あ、あの、どちら様・・・・・・ですか?」

 不適切な質問だ、と言ってから気付く。相手からしてみれば、お前の方こそ誰なんだと思われかねない。僕は、間を置かず次の言葉を発声する。


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