投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

初めての我儘。
【エッセイ/詩 恋愛小説】

初めての我儘。の最初へ 初めての我儘。 0 初めての我儘。 2 初めての我儘。の最後へ

初めての我儘。-1

『好きだよ。』

言ってしまった。
ずっと、
言わずにいた言葉。

『帰らないで。』

言ってしまった。
ずっと、
我慢していた我儘。


小さな部屋。
偽りの空間。
この世界、抜け出したら、
急に、君が遠くなるから。

小さな、嘘。
偽りの愛情。
この世界、居る時だけは、
あたしだけの、君でいて。


いつまでも
都合のいい女、
で、いられない。


君の困る顔が
無性に見たくなった。

案の定。

な、困り顔。
そう。
もっとあたしに困って、
苦しんで。


楽しいだけの関係なら
もう十分でしょ?
義務と権利。
忘れては、だめ。


なんて、思ってはみるものの。徹底しきれない、あたしの弱さ。
いつもの笑顔で
『うそ、だよ。』
呟いて、君に背を向ける。

無言で、あたしの背中
包む、温もり。
抱き締める腕に、
力がこもる。


いつもなら、きっと
ここで「ごめん。」


揖屋。


あたしは、
目を瞑って、
懸命に、願う。

何も言わずに
此処に居て。
謝りの言葉なんて、
聞きたくない。


黙ったままの君。
黙ったままのあたし。


沈黙は、あたしを、
裏切らない。


今日は言わない、
「ごめん。」
に、救われた。


君を、手放したくない。
帰したくない。
あたしの知らない
誰かの腕の中、


お願い。


『帰らないで。』


初めての我儘。の最初へ 初めての我儘。 0 初めての我儘。 2 初めての我儘。の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前