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君の羽根が軽すぎて
【青春 恋愛小説】

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君の羽根が軽すぎて―前編―-4

 それは上手いとは言えない字で書かれていた。
『きょうわウタいません
わたしわソウヤと いっしょにかえりたい
だめ?』


「…くくっ」
 リコらしくて、なんだか可笑しかった。
 俯いているのは、真っ赤な顔を僕に見せたくなかったからなんだ。
 イメージできる。
 青色の瞳だけれど、頬は桃色のリコ。

「かわいいと思う」
「…く、ぁう……!」
 そう言うとリコは素早く自分の鞄を持って、凄い勢いで音楽室を飛び出していった。
「ま、待ってよ」
 僕はかわいい彼女を追いかけた。


 ちなみに僕とリコが一緒に外を歩くのは、実は今日が初めて。
 昨日と一昨日は、僕が先に学校を出たからリコは一人だった。
 そのことを考えていると、前を歩くリコが視界に映る。
 あまりにも無邪気な姿だから、大きい罪悪感を覚えてしまう。
「……♪」
 何時ぞやの音色を鼻歌にして夕日に差し向けるリコは、セピア色の羽根を付けた精霊に見えた。
 口から漏れる音と共に、本人自身が朱色の空へと飛んでいきそうで。
 高鳴る心臓をなんとか抑えようと深呼吸しても、治まらない。…そう、仕方のないこと。


 肩の上から抱く様に腕を交差させて、リコを抱き留める。
 抱くと言っても、強くではない。寧ろ、僕の腕で包み込んでいるんだ。
 抜け出そうとすれば、誰だって抜け出せる。
「………」
 背後からのいきなりの抱擁にリコは驚かなかった。抱かれることを知ってたんじゃないかって言われてしまいそうなくらいに。

 今度はリコが僕の両腕を、自らの細い腕で強く抱きしめる。
 いや、違った。リコは自分の身体一つを使って精一杯に抱きしめていた。
 絶対に、絶対に離したくない。その志は共通している。

「…アイとは、なんデショウ」
「今のリコの感情だよ」
「……ソウ……宗弥?」
「ん?」
「たったの三日間なのに、しかも夕方だけという限りなく少ない時間の中で、あなたと一緒に過ごしてきました」
「うん」
「なんだか私、変です」
「どこが?」
「三日間の間に少し触れ合うだけで人を好きになるなんて、私、変です」
「それは変だね」
「…はい」
「…偶然なのかな、僕も同じことを考えてたよ」
「そうなのですか?」
「僕も、変だ」

 この時、僕とリコは一つになった。

 セピア色の羽根が二重になって、羽根と羽根を擦り合わせると、青色の閃光が出て羽音と共に消えていく。


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