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君の羽根が軽すぎて
【青春 恋愛小説】

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君の羽根が軽すぎて―前編―-2

「君の名前は?」
 って。
 二秒経ってからハッと気づいた。初対面でまったく知らない女の子に向かって何を聞いてるんだろう、と。
「あ…ちが、ごめん。今のはちょっとしたミスみたいなもので」
「リコ…リコ!」
 表情を崩さずにそう答えてくれた。
「…リコ?」
 太陽色の笑顔で元気に頷いてくれた。
「…僕は宗弥」

 リコの歌に惹かれたのは、さっき。
 リコの魅力に惹かれたのは、いま。
 リコの全てに感情が溢れだしてきたのは、全然後の話。


 翌日の夕方、また音楽室を訪れてみればリコが歌っていた。
「…やっぱり綺麗だなあ」
 僕の存在に気づいたのか、リコはこちらを見るなり輝く表情を魅せてくれた。
「……ソウヤ!」
 そういやまだ聞いてなかった、気になることがあった。
「リコは何年生?」
 僕はもう二年生だけど、この場所・時間帯以外にリコの姿を見たことがない。
「……?」
 …いや、首を傾げられても。
「…何年生かなー…って…気になっただけだから…」
 同時に、やっと理解したかの様に、リコの頭上に豆電球マークが出た、気がした。
 リコは右手をパーにして、左手を使いゆっくりと、右手の小指、薬指、中指、人差し指、親指の順で折り曲げていった。
 その仕草はまるで初めて数字を覚えた子供の様で、可愛らしかった。
「……って、それじゃグー、というかゼロだよ」
 今度はハテナマークを浮かべられた。

 もう一度作業を繰り返し。
 一回小指を折り曲げて、戻し、折り曲げる。その次は的確に親指を折り曲げた。
 そして薬指を折り曲げようとするが…やめた。
 右手を凝視し、うんうんと満足(?)してから、僕に向かって完成した右手を突き出した。

 人差し指、中指、薬指が上を向いている。
 つまりスリーピース。
「三年生!?」
 これはもう驚くしかなかった。
 小さい容姿で幼い性格なのに。
「…小学三年生…とか?」
 小学生程度な小ささではないけど、つい言ってしまった。
「…ちがう…!」
 …頬を膨らませて怒る姿を見てみれば、説得力(もとい圧力)がないって誰でもわかりますが。
「ごめん、冗談」
「…………」
 どうやら不機嫌なご様子で。
 可愛いなあ、なんて思ってたら、またどうでもいいことを思い出した。
 いや……まあこの際だから上手く使うことにする。

「…あのさ、昨日、目を合わせてた時から気づいてたんだけど」
 明らかに不自然な切り出し方。
 でも仕方がない。重苦しい空気の中にいるのは嫌だから、強引に話を変えるしかないんだ。
 それに、本当だったら昨日の内に聞けてたこと。
「その瞳…カラーコンタクト?」
 そこまで目立つ色ではない、少し薄いくらいの青い色。
 リコの瞳は両方とも青い。


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