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進歩
【戦争 その他小説】

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進歩-1

思い出すだけでも嫌になる。60年前のあの日、私は多くの人を殺したのだ。その罪の意識は、今でも消えていない。

私は、自分の殺した相手の顔すらわからない。
厳密には、何人殺したのかもわからない。
ただ、わかっているのは、私が多くの市民を殺したということだけだ。
私は、大空から町が焼けていくのを見ているだけでよかった。



人類は、進歩し過ぎた。
余りに生活が豊かになり、それに反して人間の心は豊かさを無くしていった。

あれから、60年たって思う。中東では、私の後輩達が戦っている。
しかし、彼らもまた、殺した相手の顔もわからないのだろう。
人をチェスの駒のように動かし、チェスの駒はゲームの延長のように人を殺す。


昨今の戦争を見ているとつくづく思う。


刀で斬り合っていたころのまま、人類の進歩が止まればよかったのにと。






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