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そばにいて……
【大人 恋愛小説】

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そばにいて……-1

「まったく、やれやれだわね」
「…………」
「しかし、不覚だったわ」
「…………」

 話しかけた所で、ベットの横に座るクマの縫いぐるみは何も言わない。
 そんなのは解ってる事。
 しかし、言わずにはいられないのだ、今の私は。

 月曜日と火曜日は晴れで、まだ六月だというのに、まるで真夏の様に暑かった。
 水曜日は雨だったけど、やっぱり夏の様に蒸し暑かった。
 それが、木曜日になると、止まない雨の所為か急に涼しくなって、その後に少し肌寒い金曜の朝が来て……

 そんな気分屋な天気のおかげで、とうとう私は風邪をひいてしまった。

 折角の週末なのに。

 いや、別に「折角」でもない。
 彼は仕事が忙しいらしく、今週は逢えないと言っていたし、この部屋に彼が遊びに来る事以外は、これといった予定はなかった。
 だからこの、目の前の天井が歪む程の発熱と、それに因る起き上がれない程のダルさだけをなんとかすれば、部屋でのんびりと録り貯めたビデオでも観ながら週末を謳歌する事も出来る筈なのだが。
 生憎、起き上がれないから薬も飲めないし、この部屋には元々置き薬なんていう気の利いたものは無い。
 半年前、ここに住み始めて間もない頃、近所にドラッグストアがあるのを良い事に、せっかく来てくれた置き薬の営業を丁重にお断りしたのだった。

「置き薬くらいは、用意しておきなさいよ」

 確か実家を出る時に、母親がそんな事を言っていたっけ。
 素直に聞いておけば良かったと、今は心の底から思う。

 そう、一人暮らしを始めて、そろそろ半年……

 思えば、この半年間は、解放感と幸福感の繰り返しだった。
 なにしろ門限が無いから、朝まで呑み歩いたって構わない。
 友達は、いつでも気軽に遊びに来てくれるし、週末には……

 週末には、彼が来てくれる。

 週末の全てを使って、のんびりと二人の時間を楽しめる。
 一人暮らしを始めた事で得た最大の収穫は、たぶんコレだ。

 しかし、良い事ばかりは続かない。
 そして、ツケは確実に回ってくる。

 この部屋には門限の無い代わりに、うっとおしい程に世話焼きな母親も居ない。
 友達や彼は毎日遊びに来る訳はなく、部屋には一人で居る事の方が多い。
 何でも一人で責任を持つ、それが一人暮らし。
 自立した大人の生活。
 まあ、一人というのは良い事も悪い事も……

 いけない、熱の所為か、訳が解らなくなってきた。

 とりあえず寝よう。
 そうすれば、いくらか良くなって、薬くらいは買いに行けるだろう。
 目を閉じて、ベットに深く潜り込む。

 ふらふらと揺れる闇の中……


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