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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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恋人達の悩み 3 〜後輩〜-4

「う〜ら〜や〜ま〜し〜いぃ」
「……」
 美弥はひたすら黙り込み、巴お手製のブランチを平らげていた。
 肉親の龍之介ですら太刀打ちできない人物相手では、赤の他人の自分は沈黙する以外にどんな方策の立てようがあるというのだ。
「あ〜、龍ちゃんとべたべたした〜い!」
「母さん」
 突然、龍之介は巴の片手を掴む。
 一秒。
 二秒。
 三秒。
 四び……。
「あ゛〜〜〜〜〜!!」
 全身にジンマシンを出しながら、龍之介は体を掻きむしった。
「うががががが!!」
「龍之介!!」
 巴の前だというのも忘れ、美弥は呼び捨てをして龍之介の手を握り締める。
 ぴたっ、と龍之介の動きが止まった。
「美弥……」
「龍ちゃん……」
 驚いて目を見開いた巴だったが、美弥の行動で我に返る。
「無理に触ろうとするなんて、無茶して……!」
「母さんなら、平気かと思ったんだけど……やっぱり、美弥以外の女は触れないなあ」
 龍之介は、苦笑した。
「無理しなくて、いいのに……」
 巴が目を潤ませる。
「龍ちゃんとべたべたしたい……けど、こんな無茶して貰わなくたって……!」
 ぼろんぼろんと泣き始めた巴に、二人は慌てた。
「か、母さっ……!」
 龍之介は巴に触れようとするが、一瞬意識が途切れたために断念する。
「巴さん」
 代わりに美弥が、巴に触れた。
「大丈夫……ですから。私、努力しますから」
 龍之介がきょとんっ、とした顔になる。
「龍之介君が他人の私に触れるんですから、肉親の巴さんに触れないはずはないです。私、龍之介君がきっと他の女の人に触れるようになるまで努力します」
「美弥ちゃん……」
 巴の顔が緩んだ。
「やっぱりあなた、うちへお嫁に来て」
 美弥の手を握り、巴は言う。
「あなたみたいな子が龍ちゃんのお嫁さんになってくれたら……」
キラッ、と巴の目が輝いた。 
「うちに女の子が増えるのよおおおっ!!今まで男ばっかりだったこの家にっ!!」
「それが本音かあっ!」
 龍之介は思わずツッこむ。
「だあってえ!」
 巴の頬が膨らんだ。
「竜臣さんに、竜ちゃんに、龍ちゃん。全員男なんだものぉ!女の子が産まれて年頃になったら一緒にお洋服買いに行ったりとか遊びに行ったりとか、色々したかったのにぃ!」
 巴はそう、ぶちまける。
 確かにまあ、異常に若い外見を持つ巴なら……兄弟どちらかのお嫁さんと並んでも、義母というより友達か姉妹に見えるだろう。
「龍ちゃん!あなた十八になったら結婚しなさい、いいわね!?」
「無茶言うなあっ!!」
 龍之介は思わず叫んだ。
「まだあっちの親にきちんと挨拶もしてないのにっ!!」
「!」
 美弥の頬が真っ赤に染まる。
「ったく……!」
 顔を赤くして、龍之介は唸った。
 美弥を組み敷いて仲良くしている現場を見られたり全くの偶然で夫婦の営みを覗いてしまったりしているせいか、正式な挨拶なるものは後回しにされてしまっている。
「え〜っ!?」
 しかしそれを聞いて、巴が不満そうな声を出した。
「龍ちゃん、まだ挨拶してないのお!?」
「近いうちにきちんとするつもりだよっ」
「早くしなさいよぉ?龍ちゃんあなた、このままの状態で万が一美弥ちゃん逃がしたら、この先女っ気ゼロの人生送らなきゃならないんだからあ」


 翌日。
 巴がいるので高崎家でも気を使うようになってしまったため、龍之介は伊藤家まで遊びに来ていた。
 美弥兄の貴之は友達と遊びに出かけ、美弥母の伊藤彩子(いとう・あやこ)はどこかへ何やらしに出かけ、美弥父は当然ながら仕事に出ている。
 つまり、何をしようとほぼ気にならない環境がバッチリ整っていた。
 そしてそんな環境が整っている以上、利用しない手はない。
 二人は美弥の部屋で濃密な時間を過ごし、汗を流そうとお風呂に入っていた。
「ねえ、りゅう……」

 ぢゅぷぢゅぷ……

「昨日の、本気?」
「もちろん」
 龍之介は即答する。
「どうでもいい女の子相手にプロポーズできる程、器用に見える?」
「ううん……」
 呟くように言ってから、美弥は少し前の事を思い出した。


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