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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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ICHIZU…A-3

「ー夕方ー

放課後の練習を終えてグランドにトンボを掛けている佳代達2年生を尻目に、上級生達は“オレ達は帰るから、後始末よろしく”と言って帰って行く。
佳代達は手を休めて帽子を取ると“お疲れさまでした!”と一礼して返す。そして再びトンボ掛けにいそしんだ。
練習後、佳代達2年生はグランド整備。1年生達はボールの管理をやらされる。あちこちに飛んだボールを全て集めて汚れをキレイに取り除き、明日、使えるようにするのだ。

佳代達がグランド整備を終える頃、日は沈んだばかりの薄暮の状態で、後30分もすれば暗くなる。しかし、1年生達はまだボール磨きの最中だった。
2年生のほとんどは、知らぬ顔して部室へと戻って行く。

佳代はその様子を見て立ち止まると、

「あんた達、あとどのくらい掛かんの?」

そばいた1年生は見上げて佳代を見ると、視線をボールの入ったカゴに向けた。まだ半分程度だ。彼はバツの悪そうな顔で、

「……え〜、あと30〜40分くらい…ですね」

佳代はため息をつくと、その1年生の横ににしゃがみ込み、

「タオル余ってる?手伝ってあげるから」

1年生は“ハイッ!”と言って立ち上がり、タオルを取りに行こうとすると、

「オイッ!オレの分もだ」

声のした方向に佳代は顔を向ける。川口直也だ。

直也は1年生からタオルを受け取ると、佳代のとなりに座ってボールを磨き出す。

佳代は訝ぶかし気な表情で直也を見ると、

「な、何真似してんの?」

直也は佳代の方を見る事も無くボールを磨きながら、

「真似じゃねーよ!…兄貴に言われてんだ。1年生の面倒見て帰れって…」

兄の信也にすれば、秋には自分達3年生は引退して新チームとなる。佳代や直也達がチームの柱となって1年生を引っ張って行く立場になる。そのための布石を今のうちから打っているのだ。

ホコリまみれのボールをタオルでキレイに拭いてカゴに入れる。あまりに汚れがひどいモノは水で洗ってからタオルで拭いてやる。

薄暮の空は、作業が終わる頃には群青色へと変わっていた。



保健室で着替えを終え、佳代はたくさんの荷物を抱えながら駐輪場へと向かって行く。すると先の方に人影が見える。職員室から漏れる明かりから、わずかに。

佳代は身を硬くして声をかけた。

「誰?」

「オレだ!」

声の主は、先ほどまで一緒だった直也だ。

佳代は全身から力が抜けるのを感じていたが、それを直也に悟られまいと踏ん張った。

「アンタ、こんなトコで何やってんの?」

そう言った佳代の唇は震えていた。だが、暗闇が幸いして直也は変化に気づかなかった。

「もうひとつ兄貴から言われたんだ…皆んなが帰るのを見届けてから帰れって」

「それで駐輪場で待ち伏せてたの?」

「1年生を帰らせた後、ふと見たら保健室の明かりが見えたんだ。だから……」

そう言い放つ直也の顔は紅潮していた。が、これも暗闇がジャマして佳代には届かない。

佳代は“ふーん”と言うと、自転車に荷物を固定しだした。それを傍らで眺める直也。


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