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レン
【二次創作 官能小説】

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レン-37

一気に車を二台買い替えるのも悪くない。もしINCが車代を出し渋ったら、ライファーに請求しよう。そんな事を考えていた。
『なぁ、ロングジャケットに革を合わせているってのに、青のシャツは不自然じゃないか?』
建物の入り口直前、俺はケイに尋ねた。
青を一切身に付けなかった俺を予想していたのか、ケイは出発直前にダークブルーのシャツをよこした。
「よくお似合いです。」
ケイは俺を見もせずに答えた。聞いた俺が間違っていたようだ。
『お互いまた生きて会える事を祈る。』
「お気を付けて。」
俺とケイは短い言葉を交して別れた。
俺は玲良の待っているであろう階段下の庭へと向かう為に庭の隅の階段へ、ケイはシェリルの元へと向かう為に建物の中へ各々向かった。

俺が異変に気付いたのは階段を半分程降りた時だった。階段下の大して広くもない庭の全景が見渡せる位置に来たというのに、庭の何処にも玲良の姿が無かったのである。
ポルシェが停まっていたという事は、彼女はもう到着しているはず。
俺は嫌な予感を感じ、慌てて残りの階段をかけ降りた。思った通り、階段を降りきった庭に人が歩いた形跡はない。鬱蒼と茂る背の低い草に、踏み荒らされた跡が残っていないのだ。
つまり彼女は重役会の開かれるこの場所に来たにも関わらず、俺と約束をした庭には来る事が出来なかったのだ。
俺は直ぐ様シャツの襟裏に付けられた通信装置に繋るイヤホンを耳に挿し込み、装置のチャンネルを建物内の盗聴用のものに合わせた。
建物内の盗聴機は何度も建物内に足を運んだケイが取り付けた物だ。
エントランス、重役会が開かれるであろう大広間、シェリルの執務室、取り付けられたのはケイが足を踏み入れる事の許された場所だけであったが、この盗聴機は重役会の様子を外に伝える為に重要な働きをする。
俺は建物内の様子に耳を済ませたが、声が聞こえてきたのはエントランスのみだった。
それも全て男の声であり、玲良の居場所を示す様な内容はなかった。
『…くそっ。』
俺はチャンネルを作戦本部との更新に切り替えると、マイクに声を送った。
『玲良との接触が不可能な状況になった。建物内にいる事は間違いないだろうが、接触を予定していた場所に現れる気配は無い。』
時刻は既に一時半を過ぎていた。
〈先を越されたという事か?〉
俺の言葉にはすぐにライファーが応えた。
『その様だ。彼女に危害が加えられる可能性は無いと思うが、強襲の際の安全が保証出来ない。建物内に入って彼女を探す。』
本来ならば俺も彼女も、強襲部隊による攻撃が開始されるまで建物内に入る予定では無かった。すんなり重役会の席に着き、不要な幹部が全員揃った途端に殺されたのでは意味がない。
だが彼女が建物内の何処に居るか定かではない今、このまま攻撃が始まってしまえば攻撃が彼女の居る場所にまで及び兼ねない。
〈待て、重役会が始まるまではその場で待つんだ。重役会が始まってからも、攻撃開始までは三十分の猶予がある。今お前が建物内に入って誰かに姿を見られる事は得策ではない。〉
ライファーの言う事は正しい。“車は在るのに姿が見えない”作戦を立てる上で俺のこの状況は予め設定されていた事なのだから、それが崩れてしまえば作戦の何処かに影響が出るかも知れない。
『わかった。だがその三十分の間に彼女の居場所が特定出来なかった場合、建物内への攻撃は全て威嚇にしてもらう。赤外線で熱反応のあった場所には一切銃口を向けさせるな。』
これが今、俺が取れる精一杯の事だった。
〈了承した。〉
俺がライファーの言葉を聞き届け、通信装置のチャンネルを建物内の盗聴に戻そうとした時、聞き慣れぬ声が飛込んできた。
〈麻取から作戦に参加している永井です。くれぐれも彼女の事をよろしく頼みます。〉
玲良の上司にあたる人だろう。
『勿論です。』
俺はマイクにそう声を送ると、チャンネルを盗聴用に切り替えた。


〈欠員がある様だが、始めましょうか。〉
そのフールの声がイヤホンから聞こえたのは、予定の時刻を十五分程過ぎた頃だった。


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