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レン
【二次創作 官能小説】

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レン-25

粗方の話を終えた時、彼女は加えて言った。
「余計な真似してごめんなさい。本当ならトラックジャッカーの処理はあなたの仕事だったのに。」
『いや、かまわないさ。君だからこそ可能だった方法だろう。』
彼女は俺の言葉の後、暫しの沈黙を置いて言った。
「怒ってるって聞いたから…。」
『随分弱気だな。普段の勝気な君からは想像も出来ない。』
彼女は何かを恐れている様だった。
だが俺がその理由を尋ねても、彼女は答えてはくれないだろう。
きっと俺達は互いに同じ想いを胸に抱いている。それは伝え合わなくてもわかる事だ。
だが互いの本当の姿を隠す故、わかり合う事の出来ない想いもある。
『ヤキモチを妬いていたのさ。君と一緒にいたフールに。』
俺は軽やかな口調で言った。
「嘘つき。」
彼女は瞳を閉じると言った。
『ならこれは嘘じゃない。レイラ、君を愛してる。君の総てを俺のものにしたい。』
俺は彼女に優しい口づけをした。
唇を離すと、彼女は僅かに微笑んだ。

「本当ならここで君を抱きたい。だが、もうじき朝だ。帰ろう。」
俺は昇る朝陽を見ながら言った。
東京では、摘発に向けての準備が待っている。
「こんなデートも良いわね。」
彼女は砂浜から舗装された道路へと上がろうとする俺に言った。
『そうだな、また来よう。』
俺達がこの場にとどまった時間はわずかではあったが、心の中には、互いに何か大きな物を得た様な充実感があった。


再び北関東道と常磐道を乗り継ぎ東京へと戻った俺を待っていたのは、築地の倉庫でのハードな事務仕事だった。
トラックジャックの危険性が無くなった今、流通部門にはこれまでの遅れを取り戻すようフールからの通達があったようだ。
その為事務方を含めた流通部門は多忙を極める。
運搬中の事故や司法機関からの摘発など、不足の事態でのダークネスへの被害を最小限に抑える為、輸出用のダークネスは日本全国からタンカーや小さな貨物船で細かく別けて外国へと送られる。
その際には様々な事務手続きが必要になり、輸出するダークネスの量が増えれば、必然的に事務仕事も増えてしまう。
「さすが部長、お忙しそうね!」
彼女は皮肉たっぷりに言った。俺があの砂浜で彼女を抱かなかった理由を、自分より組織での仕事を取ったと思ったのだろう。
労いの言葉を期待していた俺に
「女も抱けない程忙しいんじゃ、出世も考えものね。」
そう言い残し、彼女は倉庫を後にした。

俺はその後も暫しの間、流通に関わる事務仕事をこなした。
隣では俺の部下も同様に、大量の書類と睨めあっている。浅黒い肌に黒い髪、国籍不明、30代前半位の背の低い男だ。名前はムィと言う。
彼に運び屋としての腕は無いが、事務処理については優秀な人間だ。
『なぁムィ。』
俺に話し掛けられたムィは、書類から目を離さずに答えた。
「言いたい事はわかりますよ。」
『これを頼む。』
俺は自分の前に積み重なっていた書類を、ムィの前に置いた。
「かしこまりました。」
ムィは溜め息こそ漏らさなかったが、半ば呆れていたようだ。
『悪いな、睡眠時間が足りないんだ。』
俺はそう言ってハーレーに跨った。
だがそれは足りない睡眠時間を補う為ではなく、INCの駐在官事務所へと向かう為だ。
ムィがこの事に不満を抱く事はあっても、不審を抱く事はないだろう。これが普段の俺なのだから。

ハーレーを走らせている途中、フールから俺の携帯に連絡があった。
田端の裏切りが証明されたため、当面の間俺が常務と部長を兼任しろという連絡だった。
正式な常務を決めるのは重役会になる。


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