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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』
【学園物 官能小説】

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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.5-1

act.5
 《さよならの儀式》



瀬田 和馬(セタ カズマ)はいつも通りに自転車を漕いでいた。
なだらかな上り坂を幾つか越え、表通りからだいぶ距離を置いた住宅地。マイホームとアパート、小さな公園やコンビニが密集するそこを瀬田は颯爽と走った。
乗り慣れたマウンテンバイク。自分の小さな体でも扱い易い軽さが気に入っている。
(自分の体付きは気に入って無いけど)
思わず溜め息を漏らす。瀬田はワイシャツから伸びる細い腕を苦々しく見つめた。

瀬田は幼い頃から先頭だった。勿論「背の順」の話である。
骨格も細く、小学校も中学校もいつも一番前だった。今、高校に入ってから「好きな順」によって一番前は無くなったが、友達がぐんぐん伸びる中で、自分だけが微々たる量でしか成長しないのが歯痒い。
現時点、つまり高三の七月において158cm。体重は女子も羨む40kg台だ。
(なんで僕ばっかりなんだよ)
思えば思う程、自分の体に腹が立ち、自分のDNAを呪いたくなる。瀬田も瀬田なりに努力しているのだが。

薄くて小さな体が嫌で中学ではバスケ部だった。高校に上がってからは弓道部。だが、幾らしなやかな筋肉を備えたとは言え、瀬田の体は成長の兆しがまるで無い。

「和馬の体は大人になるのを拒絶しているみたいね」

そう言われたのは高校二年の頃だっただろうか。
今、瀬田が必死にペダルを漕ぐ先で待っているヒト。
―――白石 弥生だった。





白石 弥生(シライシ ヤヨイ)に初めて瀬田が声を掛けられたのは、新緑の季節―――今でも思い出せる五月二日、ゴールデンウィークの前日だった。
瀬田は高校に入ったばかりの15歳。学校に行くのが少し面倒だと思い始めた頃だった。

「ブラックのコーヒーを選ぶ高校生は精神が参っている証拠である」

ガタンッと自動販売機が音を立てて商品を吐き出した時、後ろからそんなふうに瀬田は声を掛けられた。
瀬田の手に握られた真っ黒いスチール缶。白くて綺麗に整えられた指先が、瀬田の掌からコーヒーを取り上げた。
なんだよ、と不満顔で瀬田が見上げた先は、真っ赤なフレーム眼鏡のいかにも女教師的な弥生の姿だった。
「悩み事?キミ、新入生でしょ」
にんまりと笑んだ弥生は、先ほど瀬田が買った自動販売機にコインを入れて迷わずオレンジジュース――しかも果汁100%、のボタンを押した。
「屋上で一服するから一緒に来たら?」
半ば強引に弥生は言い放ち、スタスタと階段を上って行く。瀬田は何も無くなってしまった掌をズボンのポケットにしまい、仕方無く弥生の背中を追い掛ける事にした。
何故なら今は授業中で、加えていつも閉め切りの屋上に行った事も無い瀬田だから、弥生の後ろを歩くのに何の疑問も持ち合わせなかった。いや、むしろ幸運だと思ったのだ。


「やっぱ屋上は良いよね」
プシュっとプルトップに指を引っ掛けて開ける。
さっきは気付かなかったけど、弥生の爪はパール系の薄いオレンジ色に彩られていた。そんなちょっとした事に、瀬田は同級生とは違う「女」を意識してしまった。
「ほら、若いんだからコレを飲みなさい。栄養とらないと大きくなれないわよ」
その言葉に普段なら腹立たせる所だが、瀬田は無言でオレンジジュースのプルトップを開けた。
「おー、ニガッ。よくこんなの飲みたくなったわね」
ゴクリと喉を鳴らしてコーヒーを飲む弥生を、何故か恥ずかしくて瀬田は直視出来ずにいた。間が空くのが嫌でチビチビとオレンジジュースを飲む。予測していた通り頬がキュッと痛くなるくらい酸っぱかった。


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