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逆転のプール
【二次創作 推理小説】

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逆転のプール-3

「あの日は二人でプールに行ったんだ。カナのヤツ、可愛い水着でさー。
 昼頃、二人でウォータースライダーに登ったんだ。
 あそこは景色がいいからさ。んで、写真を撮ろうとしたんだけど……、
 オレ、カメラを持ってくるのを忘れてさ、一人で取りにもどったワケよ。
 そしたら、タイホされたんだ!もう、ワケわかんねえよ!」

(つまり被害者は、矢張が降りた直後に殺されたのか)
だが、一つ問題があった。
「矢張」
「なんだよ」
「そのウォータースライダーは、使用禁止になっていたんだよな」
「ああ。みたいだな」
(みたいだな、じゃないよ!)
ぼくは一拍置いて、言った。
「立入禁止では……なかったのか?」
「禁止だったよ」
やっぱり。予想通りの答えが返ってきた。ということは当然、こういうことになる。
「つまりお前は、不法侵入した、ってことだな?」
「そういうことだねえ」
服の袖を揺らしながら、ひょうひょうと矢張は答える。
(……コイツ)
「成歩堂くん」
唐突に裁判長が、ぼくの名前を呼んだ。
「はい」
「その……なんですかな?“うぉーたーすらいだー”とは」
「……はい?」
思わずマヌケな声が出る。そういえばこの裁判長は、横文字に弱かった。
「ウォータースライダーとは、水の流れる巨大なすべり台のことです」
亜内検事がかわって答えた。
「ああ! 私もすべり台は好きですぞ」
そんなことはどうでもいい。
「ともかく、被告人はわざわざ立入禁止のところに被害者をつれていった。つまり、人目につかないところで犯行を行ったのです!」
亜内検事が、自信満々に言い切った。

 「異義あり!」

ぼくの声が、法廷内に響いた。強く人差し指を張り、ピンと亜内検事に向ける。
「人目につかないところで犯行を行った?」
「当然でしょう。人前で犯行をする人はいません」
「なにがおかしいのですか?成歩堂くん」
高い裁判長席から、裁判長が言う。
「おかしいじゃないですか!人目につかないところというのなら、ウォータースライダーの高台の上は、目立ちすぎる!」
「あっ!」
裁判長が驚きの声をあげた。
(よし! ここから一気に挽回してやる!)
「フッフッフッ……。甘いですね、成歩堂くん」
亜内検事が首を横に振りながら笑った。
「ど、どういうことですか!」
「現場写真を思い出してごらんなさい」
(現場写真……?)
法廷記録のなかから、現場写真を取り出す。
「あっ!」
今度はぼくが、驚きの声をあげる番だった。
その写真は、事件後に問題のウォータースライダーを下から撮ったもので、手前にはウォータースライダーの着水用プールが写っている。長く大きなスライダーの管をたどると、奥には高台があり、さらに、そこは青い小屋のようになっていて、景色が見渡せる程度の小窓があるだけである。
「そう。現場の高台は小屋になっていて、回りからは見えないようになっていた!」
(そ、そんなバカな!)
「で……でも! それなら被告人が犯行を行った瞬間も、だれも見ていないじゃないですか!」
慌てて反論を返した。けれど亜内検事は冷静に、眼鏡をあげながら言った。
「残念ですが、検事側はその決定的な証人も用意しております」
「な、なんだってぇ!」
また冷や汗がダラダラ流れてくる。


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