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首切り地蔵さん、足そぎ地蔵さん
【ホラー その他小説】

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首切り地蔵さん、足そぎ地蔵さん-4

「ところでよー、お前ちゃんと首切り地蔵さんと足そぎ地蔵さんの特徴教えたかぁ?」
「うん? んー、教えたと思うけどなぁ」
「なんて教えたんだよ?」
「だから、首切り地蔵さんには草餅、足そぎ地蔵さんには酒って。それと地蔵さん同士は仲が悪いってな」
「そうじゃなくてだなぁー、首切り地蔵さんは足のない地蔵、足そぎ地蔵さんは首のない地蔵だっていうことだよ」
「言ったような言ってないような……そういえばなんでだ? 首なしが足そぎ地蔵で、足なしが首切り地蔵ってのは?」
「おめぇ、ちゃんと覚えておけって! そもそもあの地蔵は元々は鬼だったんよ。首切り鬼と足そぎ鬼。
 んでだな、あの山を自分の物にしようと果し合いをしたんだ。その時に首切り鬼は相手の首を切り落とし、足そぎ鬼は相手の足をそぎ落としたわけだ。
 要するに結果は相打ち。首を切られた方はもちろん、足をそぎ落とされた方もそのまま絶命しちまったのさ」
「おーそういえばそうだったな。それでその決闘を見ていた神様が二人の鬼を地蔵に変え、あの山の守り神に仕立て上げたんだったな」
「そういうことだ。その果し合いの時の名残で、足の無い首切り地蔵さん、首の無い足そぎ地蔵さんって呼ばれることになったんだよ」
「うーん、やっぱりちゃんと教えてなかったかもなぁ」
「そうっすっと、間違えて供えてっかもしんねぇなぁ。しゃあない、俺が朝一でちゃんとしてっか見に行くさ」
「いやいや、ちゃんと教えてないのはわしだから、わしがいくさ。わははは」



 以上が『首切り地蔵さん、足そぎ地蔵さん』という話に御座います。若者は結局間違えたお供え物をしてしまったのですなぁ。
 世の中、名前からではどのようなものか判断し難いものが沢山あります。皆々様はそのような間違いをなさらぬようにお気をつけください。
 ああ、あとこれは後日談ですが、朝にあの老人が確認に見に行ったところ、首切り地蔵さんと足そぎ地蔵さんのある場所の、丁度真ん中で若者は見つかったそうです。
 その姿はご想像のとおり。首を切られ、足もそぎ落とされた、見るも無残な状態でした。道も地蔵も水浴びをしたように赤い血でびしょびしょに濡れ、そこへカラスが数羽ほど死肉をついばみに来ていました。その様子はまるで、カラスが赤い海を泳いでいるかの様だったそうです。
 それと若者の首と足は村の者が総出で探したそうですが、とうとう見つからなかったとか。一体どこに忘れてきたのでしょうね。

 おっと、もう時間が来てしまったようですね。それでは今夜の怪談はこれにて終了で御座います。
 最期に一つ、この先の道は夜中には通らない方がよろしいかと思います。なぜなら、少し歩くと首の無い地蔵と足の無い地蔵が向かい合って、お供え物を待っていますからね。もし進まれるのでしたら、せいぜいお気を付けください。
 それでは、また遭える夜を楽しみにしております……。



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