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恋におちるとき
【青春 恋愛小説】

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恋におちるとき-3

「ふぁ〜〜ァ」


あくびをしながらスリッパに履き替える俺。

ニッタは寝坊したとメールがきたから置いて来た。

朝の廊下は光を反射して真っ白でまぶしい。


「梶くん、おはよう」

「あーおはよ。体調は大丈夫?」

「おかげさまで」


ほんのり赤い口元をニッと広げて微笑む伊勢さんはさらにまぶしい。

すると伊勢さんは、着くずされたブレザーのポケットから何かを取り出した。

そして、それを俺に差し出すのだ。

とりあえず俺は手の平を見せた。

そんな俺の手の上に置かれたのは、昨日俺が伊勢さんにあげた物と同じ包み紙のハイチュウ。


「昨日のお返し!」

「え…あぁ、ありがと」


友達の所へ駆け寄って行く伊勢さんの背中を見送りつつ、手に握られた包み紙を開き、口に入れた。

どんな味がするのか分からない未知の世界に鼓動が高鳴る。

次第に口の中に広がっていくのは…柑橘系の味。


「ゆず……かな?」


まぶしい廊下。

綺麗な黒髪。

柔らかい笑い声。

柑橘系の香り。


「あーやばい…………ハマった」


周りの人目を確認してから、俺は口元を覆うように手を当てた。





恋におちたとき………それは柑橘系の香りがした。



      END


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