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針のない時計
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針のない時計-7

ピンポーン…ピンポン、ピンポン、ピンポン…ピンポーン!!
ーなっ…何?
それは、気持ち良い眠りを勢いよく妨げた。
ーん?6時?!6時?!朝よね?朝よね!!
ピンポーン…
ピンポーン…
ーまだするかっ!!
私、重たい体を引きずって玄関へ行った。
「はーい…」
私が戸を開けた瞬間、もの凄い勢いで飛び込んできた。
「健吾っ!!どこだっ健吾!!」
ーあっ!!昨日の…ハルの…
「つか、おいおっさん靴脱げよっ」
「何だね女の子のくせにその言葉遣いは!!」
おっさんはプリプリしながら土足で歩いた道を後戻ると荒々しく靴を脱ぐ。
「な〜に〜?こんな朝早く〜」
この騒ぎにハルも目を覚ましたようだ。「健吾!!帰るぞっ!!」
「!!っ、お…お父さん…」
ー……
やっぱりだ…ハルは父親を見て固まっている。
そんなハルを父親は引きずるように玄関へ連れてきた。
「やめてっ、俺帰らないからっ!!」
玄関まできて、ハルはようやく父親の手を振り払った。
ー……
私は言葉を失った…
ハルを失ってしまうのではないかと、恐怖ばかりが募って…
「バカばかりしてないで早く大学に戻りなさいっ、休学扱いにしてあるから」
「やだよ、帰らない」
「まったく…変なことばかり言って…気持ち悪い!!目を覚ましてまともになりなさい」
ー……
変なこと…って、もしかして、ハルが男を好きだって…そのこと?…
「もういやだっ、今まであんたの言う通りに生きてきてやっただろ!!これからは一人で生きていくから!!」
「何も知らない子供のくせに、今ならまだ間に合うから家に戻りなさい」
「…もうたくさんだ…あんたの言う通りに生きていくだけの人生なんて…もうたくさんだ!!」
「健吾!!」
「もう戻らないって決めたんだよっ、これからは1人で生きていくよ、あんたの世話にはならないし、恋愛だって好きにするさ」
パシンっー
乾いた音が響いた。
私だ…
私がハルの頬に平手打ちを決めていた。
『一人で生きていく』
その言葉が頭に来た。
一人で生きてきたと語った瓜生の顔がちらついた…

「…咲…?」
目を丸くするハル、だけど私は止まらない。
「一人で生きていく?偽名使って、人の家に転がり込んでバイトさえまともに続かないくせにえらそうに言わないでよ!!」
「……」
「親に対してあんたなんて言えるほど立派に生きてんの?生きてきてやった…って…結局、自分の思い通りにならないから逃げ出してきたんでしょう?父親の言う通りただのガキじゃないっ」
部屋の中を静けさが包んで、耳がつんとする。
「…ほらみろ、こんな事は馬鹿げているんだ」
父親がまたハルの腕を掴む。
パシンっー
私は相当頭にきているらしい…
父親の頬にも平手打ちをしてしまった。
母親が両手で口を塞ぎ声を飲み込んだ。
「…何をするんだ君はっ!!」
「ハルはあんたの玩具じゃないっ、一人の人間なのよ!!感情だってあるし、自分の人生を自分で決める権利だってあるのよ!!何でもかんでも自分の物差しだけで計ってないでちゃんと見なさいよっあんたの子供でしょ?!ちゃんと見守っていくのが親の努めじゃないの?」
「えらそうに…君には関係ないだろっ!!」
「関係ないわよっでもムカつくのよ人の家でぐだぐだやって」
「君もだらしない女だな、知らない男を住まわせて」
「あなた…」
見かねた母親が父親の腕を掴んだ。が、
「お前は黙ってなさい」
父親に一喝され、手を引く。
「ちょっと…あなた母親でしょ?もっとしっかりしてよっこんなんじゃハルの気持ちの行き場がないでしょ?ハルは一人の人間としてちゃんと生きてるのよっ生きてんの!!」
私は母親までにも怒りをぶつける。
本当に…
もう!!イライラするなんなんだこの家族は…


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