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帰省
【ミステリー その他小説】

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帰省-2

特に面白いこともなく、電車とバスを乗り継いで家路に着いた。
この家の鍵を持っている人間はチャイムを鳴らしてはいけない、という決まりなんてないが自分で鍵を取り出して玄関を開けた。
シン―――としていた。
乾燥した冷たい空気だけが僕を迎えた。家族のあの談笑も暖かい空気もない。人の気配すら感じられない。何かを察知した僕は荷物を放り出して居間へと駆け込んだ。
閉め切られたカーテン、乾いた空気が醸し出す雰囲気は『ちょっと買い物』で留守にしただけでは到底無理だ。一昨日までは確実にいた筈なのに。
“約一名を除いた家族旅行……”
可能性としてはある。なるほど今になって妹の動揺の意味が分かった。
安堵して玄関に置きっぱなしの荷物を取りに行く。
荷物を持ち上げたとき、そこにある物に気づいた。閉められた扉に白い紙が張ってあり、そこには黒いマジックで『お帰りなさいお兄ちゃん。今日から1月5日までハワイに行ってきます。家族より』確かに母親の字で書かれてあった。
僕に黙って旅行に行った家族に対して怒りも何もなく、この書き置きが内側の扉に張ってあったことが面白くて笑えた。
と、『家族より』の下の部分に日付が書かれていた。張ってから後で書き足した『今日から』の今日の日付だろう。字が歪んでいた。
『平成○年12月23日』


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