投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

Identity
【SF その他小説】

Identityの最初へ Identity 2 Identity 4 Identityの最後へ

Identity 『一日目』 PM2:28-2

 実は、透流は璃俐のことを気にしていた。
 なぜか、耳を“塞が”なくても“声”の聞こえない子だったから。
 ガードが固いのではない。どんなにガードの固い人間でも透流には“声”が聞こえる。
 けれど璃俐だけは“声”が聞こえなかった。誠に話してみたらこう言われた。
『禮宝のことが好きなんじゃねーの?』
 そうかもしれない。好意を持てば持つ人ほど“声”は聞こえにくくなるのは、経験から知っていた。
 でも全く聞こえないのは璃俐だけだった。本当に好きなのかもしれなかった。自分にはそんな感情なんてないと思ってた。
 だけど“声”が聞こえなくても、その人のことがわからないことはない。そんな能力がなくてもわかることは結構ある。
「……大原君もやるの?」
「え? ああ、やるけど?」
「……じゃあ私も」
 璃俐が誠を好きなのは、わざわざ“声”を聞くまでもなく、態度で知れていた。知らぬは当人同士ばかりなり。クラスのほとんどの人間が知っていることだ。
 透流は誠なら、と思った。誠なら、きっと幸せな時間が過ごせるだろう。
 身を引くというわけではないが、なんとなく璃俐に告白とかするつもりはなかった。本当に好きなのかどうかもわからないのだし、そんな曖昧な感覚で壊れることを許容できるほど、誠との関係は浅くない。
 なんとなくゲームに参加する気がなくなり(元からあまりなかったが)本も閉じて窓の外を見つめた。
 雨が降っていた。空は暗い。
 今回の修学旅行の企画として、皆既月食の瞬間を見るというのがあったが、この分だと中止になりそうだった。
 透流は少し興醒めしたのか、小さく欠伸をした。
 バスは山の中を通っている。大きなカーブが先ほどから幾度と続いていた。
 透流は少し眠ろうとした瞬間。

 ――轟音が、身体を突き抜けた。
 青や緑や黄や、様々な光が混ざり合い、白い光となって、すぐに消えた。
 眼に映るのは黒、黒、赤、黒、赤黒黒赤黒赤赤黒赤……微妙に肌色。
 耳を“塞いで”いないのにも関わらず何の“声”も聞こえてこなかった。
 ――――何コレ? どーゆーワケ?


Identityの最初へ Identity 2 Identity 4 Identityの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前