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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第21話・一戦去って、また一戦》-4

「本当に何もないから…刀を納めて…」

疾風は刀の切っ先を人差し指と中指で挟んで、顔からずらす。

「判った…」

そう言うと、不機嫌そうに楓は刀を鞘に納めた。

「これで、一段落しましたね♪」

微笑む朧に二人は、誰のせいだと言うような視線で睨み付ける。
だが、朧はクスクスと笑うばかりで全く意に介していない。

「で、疾風さん。私と出てくれませんか?」
「出ませんッ!」

そう言ったのは、疾風ではなく楓。

「あら。どうして楓さんが答えるんです?」
「疾風と温泉に行くのは、私です!!」

剣呑な空気が満ちる。
ピンポ〜ン。

「あ、俺ちょっと出てきますね!」

助かったといった表情で疾風は玄関に向かった。

◇◆◇◆◇◆◇

「どちら様ですか?」
「……私…」

扉の向こう側から小さな声が微かに響いた。

「刃梛枷?」

扉を開くと休日なのに制服姿の刃梛枷が立っていた。

「どうしたんだ?」
「……頼みたいことがある…」

スッと刃梛枷は何処かで見たような黒い紙を取り出した。

「……これ………一緒に出て…」

疾風は思わず溜め息を吐いた。
刃梛枷はキョトンとした顔で疾風を見つめる。

「…兎に角、上がって」
「……お邪魔します…」

すると刃梛枷は玄関に朧の靴があるのに気が付いた。

「……一緒に行くのは私…」

その靴を一瞥すると、刃梛枷は疾風にも聞こえないような声で呟いた。

◇◆◇◆◇◆◇

部屋の扉を開いて、疾風はもう一度溜め息を吐いた。
バチバチと一方通行の火花を散らす楓とやんわりと微笑んでそれを受け流す朧がいた。

「お帰りなさい♪」

疾風に気付いた朧は楓を無視して微笑んだ。

「お帰りなさい♪…じゃないですよ」
「あ・な・た♪も付けた方が良かったですか?」

疾風はこのままベッドに倒れ込んで寝てしまいたかった。
だが、普段なら自分を優しく迎え入れてくれる枕と布団は今や、ただの綿と布の残骸と化している。

「ふふ♪」

クスリと微笑むと朧は刃梛枷に目を向けた。すると朧も楓も刃梛枷も互いに納得したような顔をする。


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