投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

遥か、カナタ。〜FILE−1〜
【コメディ その他小説】

遥か、カナタ。〜FILE−1〜の最初へ 遥か、カナタ。〜FILE−1〜 6 遥か、カナタ。〜FILE−1〜 8 遥か、カナタ。〜FILE−1〜の最後へ

遥か、カナタ。〜FILE−1〜-7

次に起きたときには、世界が反転していた。
強い衝撃とともに投げ出された僕は、固い床に体を打ち付けてぐぇ、という情けない声を漏らした。
「生徒会の役員ともあろう者が、生徒会室でサボりとはどういう了見だ、え?水戸川?」
「会長、足、足」
僕は秋山のセリフが終わらないうちに立ち上がり、彼女を睨んだ瞬間に両手を使って訴えた。きっと僕の姿を確認するや否や内履きの裏を机の縁に叩き込んだのだろう、その体制のまま生徒会長は佇んでいたのだ。丸見えだ。フリフリのついた水色の──

ゴンっ!!

ぐはぁ、という声と供に、僕は今度は背中から冷たい床に倒れ込んだ。脳を揺さぶられ、鼻も潰れたような気がする。
「貴様という奴は、こんな状況で私の下着に欲情するとは…」
折れたんじゃね?と思いつつ鼻に手をやると、温かい液体が僕の右手を濡らした。どうやら、これを見て激しく勘違いしたようだ。
「ほら、鞄を返せ」
「………」
僕は半眼で揺れる視界の向こう側に立つ彼女を睨みながら、鞄を返した。一体何が入っているのだろうか、ずしりと重かった。それを受け取りながら、秋山は僕の足元に目を移した。
「ふむ、指輪は見つけたようだな」
片膝をついて屈み込み、金に輝くそれを摘み上げた彼女の表情にははっきりと安堵の色が浮かんでいた。
「…誰のなんです?その指輪」
興味すらなかったが、そうしなければいけない気がして何気なく問い掛けた。
「ヒサノブくんのだ」
…はぁ?
口には出さなかったが、表情には出てしまっていたようだ。それでも秋山は何を勘違いしたのか、少し照れたように笑った。
「私の3つ上の幼なじみでな、小学校のときに引っ越してしまったんだ…」
おい…まさか…。
「別れ際にな、『きっと迎えに来るから、そんなときは…』って」
僕の不安は最悪の方向に向かって走る。
「最後まで聞く前に、ヒサノブくんは行ってしまったけれどな。私の宝物だ」
頬を朱に染めた秋山は、見たこともないような乙女の顔をしていた。

こんな世界滅びろ。

僕は呪詛の言葉を心の裡だけで呟き、遠退く世界の向こう側に意識を放り投げた。


遥か、カナタ。〜FILE−1〜の最初へ 遥か、カナタ。〜FILE−1〜 6 遥か、カナタ。〜FILE−1〜 8 遥か、カナタ。〜FILE−1〜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前