投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

エンゲイジ・リングを君に
【その他 恋愛小説】

エンゲイジ・リングを君にの最初へ エンゲイジ・リングを君に 7 エンゲイジ・リングを君に 9 エンゲイジ・リングを君にの最後へ

エンゲイジ・リングを君に-8

彼はテーブルに置かれたカップにたまに口をつけながら、窓の外をぼんやりと眺めている。こちらにはまだ気付いていない。

ゆきなは千晴から見えない位置に真之を引っ張っていき、詰め寄った。

「どういうこと?何で伊藤くんがいるのよ!?」

見上げる真之の表情は、笑顔。ニヤニヤと意地悪く笑いながら、ゆきなを見下ろす。

「告られたんだろ?」

「なっ!?」

何で知ってるのよ、と叫ぼうとして、彼女は口をつぐんだ。

叫べばバレる。

「知らなかったか?俺と伊藤、仲いいんだぜ」

知らない。知るわけない。嘘でしょう?

「あいつ、今日俺んとこに来て、お前にフラれたって言うんだよ」

「それが何?あんたには関係ないでしょ?」

ゆきなは声が震えそうになるのを必死で抑えた。何が起こっているのか分からないため、恐怖で押し潰されそうだった。

「協力、してやろうかと思って」

その言葉にゆきなの顔から血の気がひいた。

───協力?伊藤くんに?

それはつまり、『俺はお前なんかいらない』と言われるのと同じこと。

「ゆきな?」

カタカタと体が震えるのが分かる。

───婚約者じゃないあたしは、用なし?

「おい、ゆき……っ」

真之の声が遠くで聞こえる。

気付いたときには、ゆきなはファミレスを飛び出していた。

走って、走って走って。苦しさに止まって息を整えていると、涙が溢れてきた。

鞄の中で携帯のバイブがうるさくうなる。

取り出した携帯はディスプレイに『真之』と表示していた。

───出るもんか……。

しかし、携帯はしつこく着信を知らせる。

それでも、ゆきなは出ない。ディスプレイを、『真之』の文字を見つめて、ひたすらバイブが鳴りやむのを待った。

しばらくすると、バイブはやみ、留守電に切り替わる。切り替わった瞬間、電話は切れた。

真之はいつも、留守電は残さない。

それは、今日も、こんな時も同じ。

ゆきなは履歴から自宅を呼び出した。番号を確認して、通話ボタンを押す。

母親が迎えに来たのは、それから20分後だった。


エンゲイジ・リングを君にの最初へ エンゲイジ・リングを君に 7 エンゲイジ・リングを君に 9 エンゲイジ・リングを君にの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前