投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 3 やっぱすっきゃねん! 5 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!-4

"ジリリリリリリリッ"とけたたましい音が佳代の部屋から鳴り響く。"ウッウ…ン"と半分寝た状態で目覚ましのスイッチを止めた。が、5分後、今度は"ピピピピピピッ"と鳴り出した。

さすがに目が覚めたのか、時計を見る。5時35分…アクビをしながらキッチンへと向かう佳代。

パンをトースターにセットして冷蔵庫から牛乳とバナナとマーマレードを取り出して、牛乳をコップに注ぐ。

テーブルに座る佳代はうつ向いたまま動かない。まだ覚めていないようだ。

"チンッ"とトースターが焼けたのを知らせる。鈍い動きでトーストにマーマレードを塗って食べる佳代。

朝食を終える頃にはようやく目が醒めたのか、支度がスピード・アップする。手早く洗面を終えて制服に着替える。カバンの他にジャージを入れた手下げも忘れない。
髪にブラシを掛けると6時15分。佳代は慌てながら家を後にした……

佳代が学校に着いたのは6時45分。彼女は教室へは向かわずに保健室に行くと、制服を脱いでジャージに着替える。監督の配慮だった。
着替えてグランドに向かうと、選手達や監督が佳代達を待っていた。佳代達は選手達の練習の手伝いを任された。道具運びにボール拾い、最後はグランドのトンボ掛けと小石拾いだ。

それが終わると慌てて制服に着替えて教室に戻って授業を受ける。放課後は4時くらいから6時半まで朝と同じ事をこなしながら、ランニングをやらされた。

夜、自宅に帰り風呂に入る。身体のあちこちが痛くダルい。彼女は腕や肩、腰や太ももをマッサージする。そして、湯上がりで柔らかくなった身体をストレッチする。これは野球チームの監督から教わった事だった。

夕食の時、佳代はいつもよりご飯を余計に詰め込むと仕上げに牛乳を飲んだ。これも前の監督の受け売りだ。"疲れた時こそ、ご飯をたくさん食べて牛乳を飲む。疲れた筋肉を早く回復させる"と…

夜の9時には睡魔が襲ってきた。が、何とか宿題を済ませようと彼女は粘った。そして、ようやく宿題が終わったのは10時を少し過ぎた頃で、佳代は倒れるようにベッドに眠った…

金曜日の朝、さすがに疲れのピークなのか初めて気持ちが萎えた。しかし、その仕草に感づいた者がいた。母だった。

[アンタの決意はそんなモンなの!しっかりなさい]

そう言った母も学生の頃にテニスで大学まで行った程の選手だった。部活の辛かった事は知っている。だからこそ、自分が決めた事に責任を持って行動してもらいたいとの願いから叱咤する母。

こうして佳代は一週間のテストを乗りきった。監督の榊は、驚きの表情で佳代に話しかけた。

[この一週間、お前を試そうとした。女子には無理だ、そのうち来なくなるだろうと思っていた。だが、期待は見事に裏切りられたよ。おめでとう]

[ありがとうございます!]

この一週間のテストで、20人の入部希望者のうち8人が辞めていった。そんな中、佳代は野球部入りを認められた。上級生達から拍手が沸き起こる。

佳代は深々と頭を下げた。

[ひとつ苦言を言ってもいいか?]
監督は佳代に対して先程までの柔和な顔から一変、真剣な顔になった。佳代も緊張する。

[オマエは一週間良くやった。それは良いんだが、"何とか一週間を乗りきりたい"との願望が強くて顔が辛そうだったぞ。野球が始まる時、審判が"プレイ・ボール"って言うよな。プレイってのは英語で"遊ぶ、楽しむ"って意味だ。これからもっと辛い練習が待っている。その時"プレイ・ボール"、"野球を楽しもう"と考えろ!]

[ハイッ!]

ハツラツとした佳代の声がグランドに響いた。女子野球部員の誕生だ……

…[やっぱすっきゃねん 完]…


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 3 やっぱすっきゃねん! 5 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前