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秘密
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秘密〜菖の恋〜-2

1
それを見て、更に笑われた。
笑い声も、爽やか・・・。って、ちがうちがう。
頭から雑念を払う。
「二年です。」
何とかだした声は、少し震えてしまった。
「二年?名前は?」
「あ、妃 菖(キサキアヤメ)です」
律儀に答えて、はっとする。
良く知らない人に名前を教えてよかったのだろうか・・・。
「俺は、楸 和馬(ヒサギカズマ)。ヨロシクな」
にっこりと笑い、右手を差し出された。他意は無さそう。に、見える。から取り合えず握り返す。

「あのっ、」

意を決して、目の前の青年に話しかけた。
「なに?」
「大学院の方ですか?」
気になっていたことを話す。
楸さんは、一瞬驚いたように私を見た。が、すぐにさっきの笑顔に戻った。
「違う違う。高等部で音楽を教えてるよ。教師。そっか、中等部にはあんまり来ないから分からなかったのか。佐々木先生(中学音楽担当)が、産休に入られただろう?だから、代わりに俺が」
にこっと笑う。
子供のような笑い方をする人だなぁ、と思う。

「ー・・何?何か着いてる?」

ずっと見つめてしまっていたようで、楸先生が不思議そうに私を見ていた。
「いっ、いえっ。何もっ」
慌てて顔を背ける。
「ぴっ、」
「ぴ?」
「ピアノ、上手ですね。驚きましたっ」
無理矢理話題を変えた。
すると、先生が照れたように頭をかいた。
「そう?ありがと」
「り、リクエストしても、」
いいですか?
おそるおそる聞いてみた。
「良いよ。俺が弾けるやつならね」
何?と聞かれてしまった。
 私の好きな曲・・。
「ー・・・トロイメライ・・」
「トロイメライ?良いよ」

ターン♪

鍵盤がなった。やっぱり上手。胸がどきどきするほどだ。
つー・・・と涙が流れる。
「・・・っ」
ヤだ。勝手に。
先生の手が止まる。驚いたように私を見ていた。
「っや、気に、しないでっ、下さぃ。・・・っ。ー・・・・っふ」
涙が止まらない。
 どうしよう。
戸惑うような先生の顔が見えた。
っと、ぽんっと頭に先生の手が乗った。躊躇うように・・・
何も言わずに、頭を撫でられる。小さい子供に戻ったみたいで、くすぐったい。
「ー・・・・・ごめんなさい。突然・・」
「平気?」
心配そうに尋ねてくる。
あーあ。そんな、子供に接するような態度は、ヤだな。
少し、悲しくなった。早い。早すぎる。
 先生に恋してしまった。
最短時間だなー。とか一人で考えてしまう。
「はい」
先生が、隣に椅子をおいた。座れという意味だろう。おとなしく隣に座る。
-2-


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