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サイダーベリー
【青春 恋愛小説】

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サイダーベリー-4

「知ってる。何回も云われたからな」
「返事は貰ってない」

そう云うと、クマノミは不快そうな表情をした。

「だって続きがないじゃないか。付き合ってくれとか、ただ云いたかっただけとか」
「は―――はあ?」

珍妙な返事に、アタシは目を丸くする。

「僕も、とかで良いでしょ!」
「そんな曖昧なのは嫌いだ」
「な―――何なんだアンタは」

アタシは力が抜けて、へたりこむ。

「えーとつまり、アタシは好きです、付き合って下さいと云えば良いの?」
「そうだ。それなら返事のしようがある」

クマノミが、ぐっと腕に力を込めた。驚いた事に、その力でアタシはひょいと立ち上がった。

「もう一度云ってみろ、高崎」

目の前に、にやりと笑うクマノミの顔がある。アタシの心臓はいきなりバクバク音を立て始めた。
ええい、うるさい。

「クマノミ、ドウ、一哉くん。アタシと付き合って下さい!」

よく云えました、とばかりに、アタシは頭を撫でられた。

「はい、喜んで」

どっかの居酒屋さんのような返事。嬉しさとムカつきがいっぺんに来る。

「なによー、それー!」
「返事だよ。僕も好きだ、高崎」

嬉しいのにムカついて、アタシはクマノミをバシバシ叩いた。

まるで平気そうな表情が憎たらしい。

「なによっ、人の事猪呼ばわりしたくせに!」

アタシの精一杯の文句に、クマノミは肩をすくめた。

「お前、僕が僕は猪なんて嫌いだって云ったの聞いた事あるのか?」
「うるさーい!ないよ!」

アタシはクマノミに抱き付いた。ムカついたけど、やっぱり嬉しかったから。

今度は抱きとめてくれたクマノミは、アタシに囁いた。

「これからの毎日は、刺激的だと思わないか?」

「思うよ」

きっと強い炭酸水みたいに、ビリビリする毎日だと思う。

隣にアンタが居るから。

アタシは平然とした表情に反してバクバクしてるクマノミの心臓の音を聞きながら、笑った。

空はいつの間にか、暗くなっていた。


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