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「風雲鬼」
【ファンタジー 恋愛小説】

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「風雲鬼」序章-2

盗賊の死を確認した瞬間、鬼童子の身に奇妙なことが起きた。
眼に、明らかな変化が見受けられる。
名の通りの鬼のような眼付きから、青く幼い少年のような優しい眼に。

何を思ったか少年は、辺りを見回して身を打ち震わせた。
辺りには、ざっと三十の死体が転がっている。
全て己の仕業の筈なのに、その顔は青冷め、呼吸を忘れてしまっている。

「……はぁ…!」

やっとの思いで吐いた息は、大きく震えた。
それが枷となったのか、少年は激しく呼吸を繰り返す。
さらに、その眼から涙がこぼれた。それはとどまることを知らず、流れ続ける。

強烈な浪唄。
嗚咽すら洩れる。
一体、どうしてしまったというのだろう。

少年はおぼつかない足取りで死体をかき分け、その場から逃げるように去っていった。



「鬼童子」。
盗賊を一掃した、鬼のような少年。
都の人々は彼を英雄と讃え、それは後に伝説となり、語り継がれることになる。
噂を耳にした将軍は忍を遣って捜索したが、その足取りを捕えることはできなかった。

鬼童子は、忽然とその姿を消した。

再び彼が表舞台に登場するのは、それから二年を経てのことになる。


<序章> 終


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