投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

春とハル
【その他 恋愛小説】

春とハルの最初へ 春とハル 0 春とハル 2 春とハルの最後へ

春とハル-1

「春はキライ…」
大学の入学式…俺の隣に偶然座った彼女は、溜め息混じりにそう呟いた。
壇上の下らない話に飽々していた俺は、ついその言葉を拾って、あろう事か『なんで?』と返してしまう。
そんな俺の声に、隣の彼女は怪訝な顔をしてこちらを向いた。まさか聞かれているとは思わなかったのだろう。そして、俺の質問に質問で返す。
「どうしてだと思う?」
どこか意味有り気なその言葉に、俺は何も考えられなくて、ただ首を傾げた。
すると彼女は、少しだけ嘲笑ったかの様な表情を浮かべた。

「私ね、春は出逢いの季節だからキライなの。」
「え?」
「だって、新しい人間関係を一から築かなきゃなんないの、面倒臭いじゃない?」
「そうかねぇ…」
「まっ、男の子には理解出来ない…か……」
最後の方はよく聞き取れないくらいの声でそう言った彼女は、また前を向いて真剣な顔で入学式に参加した。


「なぁ、やっぱり春は嫌い?」
入学式から暫くしてキャンパスライフにもだいぶ慣れてきた頃、俺はまた偶然にもあの子の隣の席に座った。
「あぁ、入学式の…」
俺の顔を確認して、彼女は納得した様に頷いている。それから、やけに通る声でキッパリと言い切った。
「大キライ!」
「ははっ、そっかそっか…」
『キライ』の言葉が若干ショックだった俺は、無理に笑って見せた。だってその言葉が…俺に向けられた言葉の様に聞こえてしまったから……
そんな俺を、彼女が不思議そうに見ている。
「どうして笑うの?」
「イヤ、あのさ…」
俺が口を開いた途端、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえた。『ハルーっ!』ってさ…

「は・る?」
俺と俺の名前を呼んだ奴を交互に見ながら、彼女はぽかぁんとしている。
「そっ、ハル!俺さぁ、名前『晴臣』ってんだ。」
「はる…おみ?」
「そうそう!漢字は違うけどさぁ、“ハル”って呼ばれてんだよねぇ…だから、大キライなんて言われちゃうと、ちょっとショックかな。」
「えっ!?わ、私…そんなつもりは……」
俺が肩をすくめると、彼女はオロオロと瞳を右に左に揺らした。
困らせるつもりは無かったんだけど…これは相当気にしちゃってるかも知れないな……


それからというもの、俺と彼女はよく話をする様になった。
彼女の持つ独特な雰囲気が、俺に妙にフィットした。

彼女と話していると、時々嫌いな“春”の話になる。
彼女は女同士の群れ行動が苦手で、昔から友達を作るのに苦労していたらしい。
しかも、群れ作成時期に出遅れると孤立して、時にはイジメのターゲットにされてしまうとか…
その群れ作成時期が春なのだ。
女とはまったく…面倒な生き物なんだな……


そんな彼女…一人で居るのが嫌いな人なのかと思ったら、そうでは無かった。
友達が居ない訳では無いのに殆んど一人で居るし、飲食店とかにも平気で一人で入る。極めつけが一人旅…一人生活をエンジョイしている。


春とハルの最初へ 春とハル 0 春とハル 2 春とハルの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前