投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ツバメ
【大人 恋愛小説】

ツバメの最初へ ツバメ 8 ツバメ 10 ツバメの最後へ

ツバメB-2

「あ、あの店行こう!」
『……』


やばい。


あたしの額からは冷や汗が出そうで出ない感じです。
なぜかって?

なにもないんです。

いや、そういうことじゃなくて、デート開始から早二時間。
なにも起きないんです。
毎回毎回、燕が変なことを言い出すと、不思議かつ厄介なことが起きるのに。
「椿芽ー!なにやってんの?早く!」
燕は笑顔で服屋に入っていく。
『あ、うん』
複雑な気分であとを追いかける。
「……これなんてどう?」
『うん、いいじゃん、似合う』
「じゃあこれにしよ。椿芽ちゃんは何も買わないの?」
『うん、お金ないからね』
この間のカレーで。
「……じゃあ、俺が買ってあげる」
『え?』
「ほら!見に行こう!」
そう言うと燕はあたしの手を引く。

うれしい。

あの燕が、こんなに…。
燕ごめんね、この間は別れてやる!なんてこと言って。
絶対に燕と一緒にいる。
今のあたし、本当に幸せです。
あたしは心の中で泣き笑いしていた。



その後、ファミレスで簡単に昼食をとる。
『どう?どう?』
あたしは燕に先程買ってもらったワンピースを何度も体に当てる。
「こーら、汚れちゃうよ」
なにこの世界中の険悪カップルが羨む理想の流れ。
あ、やばい、本当に涙溢れそうです。
来てよかった。


昼食を取った後、これからどうするかという話になり、とりあえず駅のホームでイスに座っていた。
『どうしよっか?』
「…じゃあ、椿芽ちゃん、最後にもう一か所寄っていいかな?」
『うん、でもどこ行くの?』
「コンポ壊れちゃったから、新しいの買おうと思って」
『そっか、いいよ』

この安易な決断が、あたしのその後を非常にめんどくさいものに変えてしまったのだと今になって思う。

まあ正直、この時は幸せ過ぎてなぁーんにも考えてませんでした。



で、着いたのは秋葉原。
ここ数年、“ある意味”日本で最も熱い場所。
もちろん電気機器なんかは他に比べてとても安い。
『……』
「……」
しかし、その状況にしばし絶句。
『ねえ、早く買って帰ろうよ。なんかあたしたちがいていい空気じゃないよ』
「……」
さすが秋葉原。
辺り一帯、すごい光景だ。
さも当たり前のように怪しい格好で怪しい目つきの男性がウロウロしている。
他に、路上でメイド服に赤髪や青髪のカツラをした女の子が、なにかを配っている。
『ねえ、燕』
「あ、うん」
二人は電器店で使い勝手の良さそうなコンポを選び、その中で最新の物を購入した。
なぜか燕はいつもリッチなんです。
店を出ると、さっきまで何もなかった場所に特設ステージができていた。


ツバメの最初へ ツバメ 8 ツバメ 10 ツバメの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前